HERO GIRL

□幼馴染と過去とヒーローマン
5ページ/9ページ


晃司が泣き止んだのは、昼休みが終わろうとしている頃だった
全部、聞いた

あの三年生から毎日のように呼び出されて、虐められてること
殴られて、蹴られて、それでも晃司は耐えていたこと
そんな晃司から、翔瑠が離れてしまったこと――




「…大丈夫だ。翔瑠には何も心配かけさせてない」
「いや、確実に心配してるって馬鹿」
「…痛い」
「ご、ごめん!」




ぽかりと頭を殴ったら少しだけ後悔した
ただでさえ人に殴られているのに、自分まで同じことをしてどうするんだ!?




「晃司、今日は一緒に帰ろう?」
「…駄目だ。放課後も呼び出されている」
「何それ――あいつらむかつく!」
「地味子が気にする必要はない。俺が耐えれば誰にも迷惑は――」
「晃司がそんなに辛そうなの、見てられないよ!!」
「…地味子」




思わず声を張り上げれば、晃司は驚いた顔をしていた
怒っている――あの地味子が。

チャイムが鳴った
昼休みが終わる…




「私も一緒に行くから。放課後になったら迎えに行くから」
「それは駄目だ」
「駄目でも行くの! 先に行ったりしたら絶交だからね!!」
「!!」
「いい? ちゃんと待ってるんだよ!?」



――あと、顔洗ってから授業に出るんだよ!?と地味子はまるで母親の様にそう言っていた


それが何だか嬉しくて…少しだけ笑いがこみ上げた
笑うなんてこと…久しぶりだった



地味子は、完全に怒っていた
晃司を虐めている三年生にも
それを耐えていた晃司にも
傍観していた翔瑠にも

何より…気づいてあげられなかった自分自身にも!



――ワルめ。もう許さないぞ!


ヒーローマンの様に、悪い奴を懲らしめようと地味子はそう強く思っていた





――*






放課後は、晃司のクラスにやってきた地味子を見た瞬間、翔瑠は――鬼が居ると恐怖を感じた




「地味子…?」
「晃司。行こう」
「…しかし」
「しかしも何もあるか!」
「ど、何処に行くんだ。地味子と晃司は…」



恐る恐る翔瑠が呼びかけると、地味子は――明らかに怒っているようだった




「ワル退治」
「は?鬼退治じゃなくて?」
「お供は要らない。生憎お腰にはヒーローマンストラップしかぶら下がってないから、これは駄目だ」
「お気に入りだもんな! って…お前ら、本当にどうしたんだよ?」




翔瑠が晃司を見た――それが、晃司にはとても久しぶりな気がした
そして晃司は、その眼を真っすぐに見据えた




「翔瑠。何でもないんだ、また明日」
「また明日ね」
「お、おう…」




二人が何もないと言ってるから、大丈夫だよな…

でも、昼間見た二人は――晃司と地味子だった
晃司が泣いている姿なんて初めて見たし、地味子がそれを優しく抱き締めていた…

俺の入る余地なんて、声を掛ける資格なんてないと思った




「また、明日な…!」




明日、また二人に会って聞けばいい――

そう、翔瑠は思っていた


二人がその日から、二日間休んだことなんて今はまだ知らずに…




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ