HERO GIRL

□私と過去と地獄の原点
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喧嘩なんて知らない
格闘技経験もない
いつも人質の役で、二人が戦っている様を見ているだけだった

ゲームの中でなら、簡単に操作できるけど――
現実はどうも、そうはいかないみたいだ




「この…っ!! このっ!!」
「おいおい。いい加減にしろよ、体格差考えろって!」




幾らパンチを繰り出しても、赤が邪魔をした
立ち塞がって、パンチを受け止めて、それだけだ
まるで父親が簡単に子供をあしらうかのようだ
反撃をしてこないのが悔しい――私が女だから?

けれど、見ていた黄色はずっとイライラしてた




「どうした。殴れよそいつを」
「い、いや…こいつは女だし!」
「あ? おめー、何言ってんの…?」




――このサイコ野郎、相手が女でも容赦なしかよ…!




「おい、お前もやれ。二人がかりだ」
「えっ、俺も…!?」
「お前らも見ていろ。俺に楯突くと――女でも許さねぇ。あとチクったら殺す」




その場に居た全員に言い聞かせるように、黄色い奴はそう言った
誰も目を合わせず、その光景をただ傍観する

…まあ、それが普通なんだけどね
悪くないよ、皆は


青が赤に加わった
ちょっと腰が引けてる気がする――




「でも、ワルはワルだ!」
「――ぐっ!」




渾身のパンチが青の腹に届いた
でも、次の瞬間には赤によって床に組み敷かれた、くそ重いんだけど!?




「地味子!」




翔瑠が呼ぶ声がした



その時、不意に扉が開かれた――




「やめろ」





晃司が居た――

ざわざわと口々に聞こえる、晃司への声


…翔瑠は晃司を見捨てていた
それだけは聞きたくないと思った




「俺は此処だ」
「晃司…」
「翔瑠すまない。遅くなった」
「何してんだよ…っ。お前も何で来たんだ!」
「…」




晃司は何も言わなかった
床に這い蹲る姿を地別した後で――赤い男に組み敷かれた地味子を見た

ギリっと歯噛みする




「地味子を離せ」
「てめぇ――」
「おはよう、晃司」
「あぁ」
「(なんだこいつらっ!?)」




こんな状況でも、この二人はいつものように挨拶を交わしていた

それがその場に似つかわしくなくて、面白くなくて――黄色い奴が机を思い切り蹴り倒した




「よく来たな、と褒めてやる」
「…約束が違う。何故二人に手を出した?」
「其処のデカ耳も糞女も、俺に反抗してきやがったからだよ」
「こ、晃司。約束って――?」



翔瑠の問いに、晃司は答えてはくれなかった
代わりに答えたのは――黄色だった




「お前が我慢すれば、お前は見逃してやるって話だったんだよ」
「え…」
「でも、その女は生意気だ。まだ餓鬼だけど、身体は良い」
「マジキモい」
「…俺の手でいい女にしてやる」




何だっけ、こういう時に――ふと見たテレビでやってた気がする
今と同じように発言した男を見て、お父さんがなんか呟いていたな…
お母さんが教育に悪いとか言って、怒ってたっけ…


えぇと――あ、そうだ、思い出した!




「『どーてーの癖に何言ってんだ。こいつ馬鹿か』」
「…は?」
「男はみんなどーてーなんでしょ」




お父さんが言ってたよ、と言えば何だかその場が凍った気がした
え、なに。皆はどうしたの??

クラス中が目を逸らすのは解ってたけど、何で?
ねぇ、男子。なんで?




「この赤もあの青も、そこの黄色も、そうなんでしょ?」
「やめてくんない!?」
「地味に傷つくから、マジで!!!!」
「…俺とこいつらを一緒にすんじゃねぇ!!!」




何、何でこいつら怒ってるの
本当の事を言ったまでじゃない、なんでそんなに怒るの、ねぇ?




「本当に生意気な糞女だぜ…! 何なんだてめーら。どいつもこいつも俺に楯突きやがって…!」




あ、これは…あの時の顔とそっくりだと思った
本当にキレて、カッターナイフを取り出したのと同じだ――





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