HERO GIRL

□地味子ちゃんと復活といいね
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――とんでもないことになった

俺が…俺達が巻き込んだせいで、地味子ちゃんまで…




あいつらに連れて来られて、何処かの工事現場に来た
俺と…地味子ちゃんも一緒に




「ふーん。『名無し地味子』ちゃんね…」




地味子ちゃんが持っていた内服薬の袋を見て、神野が言った




「大丈夫なのか? この子、病院帰りっぽいんじゃ?」
「おう…なんか急に動かなくなったし――」




スキンヘッドと七三分けが彼女を心配している
勿論俺もだ

地味子ちゃんは、此処に来てからどういう訳か大人しかった
車に乗っている間、彼女が近くてドキドキしたけど――ちょっと呼吸が荒かったし、寒いとか言ってた気がする

今も俺の隣でぐったりとして、座り込んでいた
相変わらず、何も喋らないまま――




「とりあえず温めとけ。火の近くに置いておけばいいだろ」
「なっ…彼女は関係ないだろ!?」
「あ?」





神野が俺を見てきた
凄んでいる顔がとても怖くて震える




「加藤道也。彼女はお前のせいでこんな目に遭ってんだぞ。可哀想だよなぁ」
「うっ…」
「これからお仕置き動画を撮る。彼女が居たら俺が虐めてるみたいで、印象が悪いだろ」
「じゃあ、こっちに…」
「お、おいっ! 地味子ちゃんに触るな!」
「パン一野郎に触られるよりはマシだろうけどな?」




くつくつと三人は俺を――俺達を見て笑う
俺の隣にはもう一人いた

逃亡していた坂木だ
此処に連れて来られて、同じようにパン一にされて、ガタガタ震えている





「…ううっ」




坂木も俺も、寒さで震えていた
当然だ。こんな低気温でパンツ一丁なんて、凍死させる気か、こいつら――!
おまけに正座だぞ…!!

幸いなことに、奴らは彼女には手を出す気がないようだ
標的はあくまで俺達
でも、カメラの前では…だ



さっきも言っていた通り、彼女の姿が動画に映れば、どうして其処に女がいるのかなどと、余計な炎上を起こしてしまう恐れがある
何千、いや何万ものフォロワーを持つ奴にしてみれば、それは極力避けたい面倒事だ




「ここ数日で、フォロワー数が格段に増えた。それに…彼女が一番の反響だ」



爆発的な反響で、動画の続編を待ってるやつらが居る
SNSでそれは拡散され、口コミで広がっていく

フォロワーは多ければ多いほどいい
そのアカウントを売りさばけば、莫大な金だって手に入る――




「今もコメントは増え続けている。それは全部彼女の情報を求めてってのが多いが――なかなかどうして」




何より、神野は地味子ちゃんの価値に気付いてしまった…




「こいつは、金になる女だ」




嫌な笑いを見せて、神野はそう言った




「そろそろ始めるぞ」
「おう」




スキンヘッドの男が、彼女を火の傍まで抱きかかえていく
工事現場内で唯一の灯りであり、暖房代わりのドラム缶だった

優しく下ろせよ?
あと、コンクリートの上で寝かせるなっ
何か敷いてやれよこの禿!


うっ…こっち見た ごめんなさいっ


地味子ちゃん大丈夫かな
少しでも彼女の身体が暖まってくれるといいけど…

つーか、俺が温めてやりてぇ…




「皆さん、お仕置きの時間です。現在の気温はマイナス二度」



――マイナス二度? そりゃ寒さに体震える訳だわな



「寒いよなぁ? 俺なんてお前らの動画見た時、もっと寒かったんだぞ」
「ぷはは」




――あの宣戦布告を二人でなんて、撮らなきゃよかった…

そうすりゃ、こんな目に遭わなくて済んだ

地味子ちゃんだって…巻き込まずに済んだ





「コメント欄でお仕置きの方法を、募集したいと思います。その中から一つ選んで、後程発表します」




其処で動画は一度区切られるようだ




「ちゃんと撮れたか?」
「おう。つーか、マジ寒そう」




どうにかして彼女を逃がしたい
俺や坂木は、自業自得だって解ってるけどよぉ…

地味子ちゃんは本当に関係ないんだよっ


お、俺の所為で地味子ちゃんが傷つくとこなんか、ぜってー見たくねえ!





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