HERO GIRL

□地味子ちゃんと復活といいね
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「何だ、起きちまったよ」
「これから面白いことする予定だったんだけどな」
「まあいいや。カメラ回そうぜ」




目覚めたら、見覚えのある男三人が目の前にいた
此方を見下ろして、しかも七三男は相変わらずスマホを手にしている

カメラって――何これ、動画でも撮ってるの?




「地味子ちゃん…っ! に、逃げてくれ…!」
「道也…?」




その後ろで、裸の道也が正座のまま叫んでいた
あ、違った――ちゃんとパンツ履いてる

その隣には…坂木さん。だよね??
あんな髪形だったかな?
逃げている途中で苦労しちゃったのかな…




「お目覚めかな?」
「貴方は神野、さん…だっけ」
「憶えていてくれて嬉しいよ。あの『地味子ちゃん』にね」
「…」




――『地味子ちゃん』

そう呼ばれて、何となく…いや、酷く不愉快だった


終わったと思ったのに

もう大丈夫だと思ったのに



やっぱSNSって怖いね




「道也と坂木さん、なんであんな格好? 寒いよね、絶対寒いよね?」
「あいつらにはお仕置きが必要なんだ」
「お仕置き…」





この人、爽やかに笑っているけれど――




「…デンジャラス兄さんみたいだ」
「は?」
「ううん、こっちの話。でさ――何で撮ってるの?」




こうして話している間にも、七三男はスマホをこちらに向けていた
明らかに動画を撮っているようにしか思えない




「『地味子ちゃん』を復活させるんだよ。そうすれば、もっと金が稼げる」
「意味が解りません」
「ぷくく、大人しく撮られてりゃーいんだよ」

「…そうですかーっと」




――バキッ




「はっ!?」
「嘘だろ…!?」
「女のパンチだぞ!」




色々と面倒なことになる前に、こう言うのは壊したほうがいいよね
堂々とスマホを構えていたから、堂々と殴ってやりました
瓦割をするときみたいに気持ちいい…!




「…あ。修理代って幾らするんだろう」




そして壊してから気づいた
真っ二つだし、スマホの画面を修理した時以上だよね…




「て、てめぇ!!!」
「お、俺のスマホが…!!」
「なんか…ごめんなさい?」




全く悪びれる様子はない
だって、悪いのはそっちじゃないか

人の許可なしに動画なんて撮っちゃだめだよ
お巡りさんが速攻飛んでくるよ?
うちのお父さん限定だけどさ




「いい度胸だな――」
「身の危険を感じたので。そう言うのはちょっと学習したんです」
「はぁ?」




クレイジーおじさんやデンジャラス兄さんの件で、結構経験値は積んでいますから

まあ、そんな事を言ってもこの人たちには何のことやら、あぁ――首を傾げているね




「おい、押さえろ」
「え?」
「女だからって痛い目に遭わないとでも思ってんのか? 病人が」
「…くしゅっ」




あぁ…確かに病人だったわ
此処、寒くない?
道也達の方がもっと寒いんだろうけど…

そろそろ帰って暖まりたいんだけどなぁ――




「忘れてた。私、病人だった」
「…地味子ちゃん??」
「道也、風邪ひかないでねーって、私が言えた台詞じゃないけどさ」





そう言って、彼女は構える

多分、空手か何かの型だと思う




「すぐに、助けてあげるから」




なんで…




「ど、どうして君がそんな事をするんだ!? か、関係ないだろっ!」
「あー、坂木さんがそれ言っちゃう? 巻き込んだ本人がそれ、言っちゃう?」




まあ、ホイホイついて来たのは私なんだけどね




「『助けて』って。そう言ったのは坂木さんだよ。道也は――まあ、ついで?」
「ついで…!?」
「だって道也は何も言わなかった。遠慮してるのか知らないけどさ。助け欲しいなら、声を大にして言いなよ。…友達を助けるのに、理由は要らないでしょ」
「友達――…」


「助けを呼ぶ声に応えるのが――『ヒーローマン』だよ。…まあ、あの時は直ぐに助けなくてごめんね?」




そう言って、彼女はにっこりと笑って見せた




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