HERO GIRL

□地味子ちゃんと復活といいね
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「…どういうつもりだ? まさか、俺達とやり合おうってのか」




相手は三人。しかも男。

…うん。一番強いのは神野だけだ
スキンヘッドは狼狽えているし、七三男はまだ動揺している
正直、今この二人は戦力にならないと思う

多分、私の方が強いから
己惚れじゃなく、真剣に




「そのつもりだけど?」
「はっ。聞いたか? 女一人でどうしようってんだ」
「ぷははっ…はがっ!?」
「は…? うごぉおっ!!」




隙を突けば――ほら、楽勝だ
ちょっと動いただけなのに、油断しすぎだよこの二人




「ん? その女一人にどうして膝を突いてるのかな、この二人」
「てめぇっ…」

「は、早い…っ」
「地味子ちゃんすげぇ…! くそっ、スマホが手元にあれば――!」




感心するよりも早く逃げようよ?
あと、道也は何を悔しがってるの?




「おい、いつまでそうしてるんだ?」
「あ、あの子…重いパンチだ」
「畜生、脚が――っ」
「おいおい…マジかよ」




たかが女の力

たかが女のパンチだ



それを、大の男が二人も膝を突いて崩された――
此奴らが不意打ちを喰らったせいもあるだろうが…




「女にしては勿体ねぇな」
「それはどうも?」
「褒めてねぇよ」
「あ、そう」




隙のない構えに、神野は唇を噛み締める
二人は役に立たない

と、なると――




「お前、俺が誰だか知ってんのか? 西高の神野大翔だぞ」
「私は才源高校の名無し地味子」
「別に聞いてねぇ!」
「あ、名乗ったから名乗り返しただけなんだけど――あと、貴方が誰だろうと私、興味ないから」
「…いちいち癇に障るやつだぜ!」




あー、そう言うの女の子に言っちゃう?
どうも私は人を困らせるのが得意みたいだね




「絶対に許さねぇっ」
「絶対、ね。私もワルは許さないよ」
「ワルか…くくく」





なるほど、タグの『ワル』はそう言う事か
それが彼女の口癖なのかもしれない

だが、二人が油断していたとしても自分は違う!
スピードも、パワーも、俺の方が上――!!




「喰らえっ!!」




渾身の一撃をその可愛い顔面に――!

完全にヒットしたと思った


けど――彼女はその拳を難なく見切っていた
小さくその口からため息が漏れる




「いきなり顔を殴るとか。男の風上にも置けないんじゃない?」
「なっ…避けただと!?」
「ねぇ、もしかして今のって全力? そんな訳ないよね」
「…はっ、調子に乗るんじゃねぇ!!」




神野がもう一度拳を振り被った時だった




「地味子ちゃん!」





蛍介の声が聞こえた気がして、其方を振り返っていた
にやりと神野が笑う

余所見をするなんて、甘かったな――!




「地味子ちゃん、後ろ!」
「後ろ? あぁ、そっか。忘れてた…」
「忘れ――!?」
「おらあああっ!!!」
「残念。ハズレ、よっと」
「うぉおおおっ!?」





わぁ、なんて古典的なこけ方だろう
足を突き出しただけで、それに転ぶなんて――案外鈍くさい人みたいだ

顔からコンクリートにダイブって――趣味なのかな?




「だ、大丈夫!?」
「蛍介。流星。晃司も?」




改めて蛍介の方を見れば、其処には三人の姿があった
二日ぶりの再会に、思わず頬が綻ぶ




「わぁ…っ! 凄い久しぶりだねー!!」
「(大手を振ってる…!)う、うん…っ」
「何だ、あいつ元気じゃねぇか。おい?」




流星が隣の晃司に声を掛ける
だが、晃司には黙ったまま地味子の方を見ていた

…あれ。晃司の顔が怖い? な、何で?


感動の再会を喜んでいた自分との温度差は、こんなにも激しかっただろうか?

その晃司がスタスタと歩き出すと、ますぐに坂木さんの方へ向かっていく




「坂木」
「…!」
「全部見ていた」
「バ、バスコ…っ」
「責任を取って謝れ。そうしたら俺が必ずお前を助けてやる」




晃司は坂木さんを助けに来たらしい
彼もバーンナックルのメンバーで、クラスメイトだ

仲間想いの晃司らしいと、少しだけ笑って見せる




「だが、お前がまだこんな事を続けたいのなら。俺は止めない。お前の意思を尊重しよう」
「お、俺は…」
「坂木。お前は自分の意志で撮っているのか?」
「ち、違う…俺は…アカウントとか、金とか、どうでもよかった。俺は――ただ。構って欲しかっただけだ!」




坂木さんが胸の内を大きな声で叫んだ

それが、彼の発する『SOS』――




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