HERO GIRL

□私と後日談と日常
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「長谷川君が急遽休むことになってねぇ…」




店長は申し訳なさそうにそう言って来た
バイトに入るのも何だか久しぶりな気がする
今なら、夜だってどんとこいですよ!




「僕はまだ腰の調子が悪くて…」
「いい病院紹介しましょうか。腕のいいイケメン院長さんですよ」
「それって隣町にある大きなとこだろ? 僕もお世話になってるよ」




おや、お母さんの友人さんは結構有名みたいだ
ご近所でも腕と顔がいいと評判で、近くの医院よりも隣町に足を運ぶ人も多いそうだ




「申し訳ないけど、夜に入ってもらえないかな?」
「勿論です! というか、私も休んでごめんなさい」
「いいんだよ。君が元気になってよかった」




バイトに穴を空けてしまった分、私が頑張らなきゃいけないな!




「でも、最近は本当に物騒だからね。夜だととても心配なんだけど――」
「大丈夫です。何か遭ったら刑事さんが飛んできますから!」
「何もない事を祈るよ」




私としても、来ないほうが本当にありがたい
今日も仕事だって言ってたし




「店長もゆっくり休んでくださいね!」
「ありがとう。君達二人のお蔭で本当に助かってるよ」
「蛍ちゃんが休みなんて珍しいですね?」
「なんでも。急用が出来たみたいなんだよ」
「そっかー」




会話もそこそこに、店長は仕事を終えて帰って行った

久々のバイトだ。張り切って頑張ろう!
と言っても、深夜のコンビニはそれほどお客さんも多くない

この時間だと大体床や窓をピカピカに磨いたり、商品を端から端まで綺麗に手直ししたりと、時間に余裕がある
最近は寝たきりな感じだったので、満足に体を動かせてない

…晃司に組み手の相手してもらわないとなぁ




「晃司って言えば――もうすぐ誕生日だよね」




そう言えば、まだ何も用意していない
今年は何を買おうか

去年は着ぐるみのモフモフパジャマをあげた
その前はピンク色の水玉パンツだった

…クレイジーおじさんの時に、それを履いて来たのはちょっと驚いた
まだ使ってくれてたんだと、ちょっとニヤけたっけ





「流石に高校生ともなれば、もう少しいい物をあげたいな。バイトもしていることだし」




普段からバイトのお金には手を付けていない
というか、使うべき用途が見つからない

大きな買い物は縁がないし、服や服飾なんかは知らなかったとはいえ、紅輝が買ってくれた物がまだある
たまに皆で放課後、お茶しに行くぐらいかな




「…そっか。こういう時に奮発したらいいんだよね!」




『自分へのご褒美』を、地味子は知らない――





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