HERO GIRL

□私とスカウトと芸能人(仮)
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――翌朝

いつものように晃司と早朝の筋トレをしていると、遅れて翔瑠がやって来た




「おはよう翔瑠。寝不足? 何だかやつれてる気がするけど…」
「おう…大したことねぇよ」
「翔瑠、大丈夫か?」
「お前こそ――あれから振り回されっぱなしだったじゃねぇか」
「えっ。翔瑠、晃司と一緒に居たんだ?」




二人で夜遊びなんてズルい




「私も混ぜてくれればよかったのに…はっ! 男の子しか入れないお店かなっ!?」
「何を想像してんだよ、おい」
「何って――おさわりOKのお店?」
「未成年!!! …じゃなくて! んなとこ行くかよ!」
「ですよねー」




良かった、少しは元気そうだ
ツッコミを入れられるなら問題ない




「それはどんな店だ?」
「聞かなくていいぞバスコ」
「えっとね。夢のような場所らしいよ?」
「ほう。夢の国みたいなものか。楽しそうだ」
「いやいやいや! 全く違うからなっ!?」




ちょっと話がややこしくなりそうなので、この辺りにしておこう
自分で言っておいてなんだけど、意味解ってないからね
道也が一徹たちと話してるのを聞いただけだから




「じゃあ、二人で何処に行ってたの?」
「コンビニだ」
「コンビニ?」
「あぁ、美怜が来てほしいと言うから――もがっ」
「わー! わー!!」




どうしたの翔瑠。晃司が苦しそうだよ
それに、美怜って名前が聞こえたような…




「チビ蛍介に会いに行ってたんだよな!!」
「えっ…」
「なっ!! そうだよなっ!?」
「う、うん…ぜぇ…ぜぇっ」




翔瑠に突然話を振られた蛍ちゃんは、スクワット運動で息が切れがちだった
そんな彼にタオルと水の入ったボトルを渡してあげる

何だ。気のせいか…



「蛍ちゃん、スクワット終わったの? お疲れ様」
「あ、ありがとう。地味子ちゃん…」
「翔瑠はそろそろ手を離さないと…」
「わ、悪いバスコ!!」




翔瑠は大丈夫かな。一人で何を焦っているのか解らないけど…




「チビ蛍介。次は腕立て伏せだ」
「えっ! ちょ、ちょっと休ませて…」
「…仕方がない」




あまり無理をして怪我でもしたら大変だよね
蛍ちゃんには蛍ちゃんのペースがあるんだし…まぁ、休憩し過ぎって言うのもどうかと思うけど

じゃあ、蛍ちゃんが休んでいる間、晃司と組み手でもしようかな




「晃司、組み手やろー」
「いいぞ」
「よーっし。会得中のみかわしきゃくでも試そうかな!」




…地味子ちゃん、本当に組み手でダンススキルを取り入れたんだ
バスコを相手素早い動きを見せて、攻撃をかわしている

昨日の今日なのに、本当に凄いな
バスコに言わせれば、磨けばもっとキレが出るみたいだけど




「…おい」
「はい?」
「昨日のこと。地味子には言うんじゃねぇぞ」




ベンチで僕の隣に座った翔瑠が、そう言い出した

昨日の事って…




「ど、どうして?」
「どうしてって――言える訳ねぇだろ。バスコが他の女を家まで送ったんだぞ」
「あ、あれは美怜ちゃんが無理矢理…」
「だとしても、結果的にはそうなっただろうが!」
「こ、怖いよ。翔瑠…!」




翔瑠がコンビニに戻って来たのには驚いたけれど、バスコが居るなら当然かと思った
いつもなら美怜ちゃんは、もっと遅くまで僕と喋ったりしている
でも昨日はバスコが、早く帰る様にと言い出した為に…




『じゃあお髭の人。送ってよ。…ぶーちゃんはバイト中だし駄目だもん』

『『!?』』

『なぁに? 地味子は送れて、私は送れないって言うの?』

『いや。それは…』
『解った、送る』
『バスコ?!』
『地味子の友達だ。それにこんな時間に、一人で歩かせるわけにはいかない』

『やったー!』




――まあ、バスコの言う事も一理あるんだけどね
一人で帰らせて変な人に遭遇したら怖いし


それにしても、翔瑠…近いし怖いよ




「おーい。何してんの。蛍ちゃん虐めちゃ駄目でしょ」
「翔瑠。虐めは駄目だ。ワルのする事だ」
「誰が虐めてんだっ」
「(こ、怖いよー!)」




日に日に二人の組み手が――もとい、地味子ちゃんの動きにキレが増していた
何でも格闘技のDVDで研究しているそうだ

本当に凄いな…
でも、そんなに強くなってどうするんだろう、地味子ちゃん


それから暫くバスコと地味子ちゃんの組み手を見ながら休憩をして、僕は運動を再開した





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