HERO GIRL

□私とスカウトと地獄の原点改
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「見ない顔ね」




初対面の女の人に、急にそんな事を言われた




「制服? 撮影のコンセプトかしら」
「コンセプト?」




この人は、一体何を言っているのだろう
あれこれ言いたいことや聞きたいことは沢山ある
その前に、早く手を洗いたいんだけどなー




「貴女、モデルじゃないの?」
「まさか。ただの高校生ですよー」
「…本当に?」
「はい。あとトイレの中は火気厳禁ですよ。お姉さん」
「私の事知らないの?」




本当に初対面の女の人だ
顔は綺麗な人だけど、それだけって言う印象しかない




「誰ですか?」
「私はアルよ。今大人気のトップアイドル! この事務所にポスターがあるでしょ」
「…あぁ。そう言えば。DGって人の印象が大きすぎて」
「な、何ですって!」




もういいや。こっちの水道を使おう
掃除用だろうけど、同じ水には変わりないよね

こんな大きな事務所なのに、洗面台が二つってどう言う事
しかも一つは故障してるし、もう一つは彼女が居て使えない




「あんたが同じ事務所の人間なら、私が潰してるところだわ!」
「え、何それ怖い。芸能界怖い」
「事務所の人間じゃないなら、ホント何なのよ?」
「何って――マネージャー?」
「はぁ?」




訳が解らないと言われた、私もだ




「ホント意味解んないっ。新人だと思って優しく声を掛けたのに…話しかけるんじゃなかったわ!」




アルさんはイライラした様子で深く煙を吐いた




「メイクを直すのは構わないけど、煙草は駄目ですよ」



さっきも言いましたよね?




「何よ。私の勝手じゃない」
「いやいや、勝手過ぎますよ。大人なのにマナーも守れないんですか?」
「…っ!」




正論を言われて、彼女は黙ってしまった
それから流水でタバコの火を消し、そのまま水と共に流れていく




「これで満足?」
「…こんな大人にはなれないだろうなと思いました」
「ふんっ。私は特別だもの。無理よ」
「そう言う意味じゃないんですけどね」




ドヤ顔で言われたけど、マナーはしっかり守ろうと思った
ちょっとのマナー違反が、環境や人を駄目にするんだよね




「もう行くわ。余計な時間を食っちゃった」
「はぁ…」




最後までツンケンした雰囲気で、アルさんはその場を後にした

芸能人ともなると、人が変わるのかな
それともあれがあの人の本性?

…蛍介は、変わらないでほしいなぁ





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