HERO GIRL

□サイコパスレディとヒーローガール
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戦いが長引くと此方も不利だ
勝負は短期決戦しかない

そう言えば、相手が女性って言うのも初めての事かも知れない

大抵いつも男の人を相手にしていたから、全力だったけれど…
女性が相手となるとその加減が難しい
一応顔は女の命だしなぁ
全力で殴ったら痣になるし、うーん…
じゃあ無難にボディかな――この人、妊娠とかしてないよね。大丈夫だよね?




「こんのぉおおお!!!」



女の動きには型がない
格闘に通じている訳じゃないから動きも遅い
そもそもスタンガンは突きが主な攻撃方法だから、先程も言った通り間合いに入らなければいい

でも私は遠距離攻撃なんて出来ないし、脚のリーチもそんなに長くない
かと言って取っ組み合いになれば、スタンガンの餌食になりやすく、それだけ危険度が増す

判断が難しいところだが――




「はっ!!」
「――ぐふっ!!?」




そんな危険も顧みず、私の脚はサイコパスレディの腹部を目掛けていた
勢いよく吹っ飛ぶと、家の飾り棚に直撃した
大きな音を立てて飾り棚が倒壊したが、これを好機と更に詰め寄った
女の手にはまだ、スタンガンが握られているからだ

それを取り上げなければ――…




「うわああああっ!!!」
「…っ!? あぶなっ!」




蝋燭を投げてくるなんて何事ですか!?
危なく顔面が火傷するところだった
私が怯んだその隙に女が迫ってきたけれど、一応想定内ではある


迫るスタンガンを避け。反撃に転じる




右手を拳に強く握り、



女とこの距離を見極めて、全力で…



――撃つべし!!




「正・拳・突き!!」




空手で幾度となく練習した技だった
拳はサイコパスレディの左頬へ綺麗に決まった

蹴りと拳、双方の攻撃は彼女に大ダメージを与えたようでほっとする
現に女は呻き声を上げて床上でのたうち回っていた

ところでスタンガンは何処かな?
あっ、それと蛍介を解放しなきゃ!!




「蛍介、大丈夫?」
「…僕は地味子ちゃんが怖いよ」
「えっ。何それ酷い」
「は、はは…まるでゲームだよね。君は」




…褒められているんだろうか? それは
とにかく蛍介を拘束していた電源コードを解いていく
随分きつく締められているせいか、なかなか解くことが出来ない




「スタンガンを持った女性なのに…危険だよ、ホント」
「私も身の危険を感じたけどね。でも蛍介だって怖かったでしょ」
「うん…助けてくれてありがとう」




面と向かってお礼を言われると、何だか気恥ずかしいものだ
蛍介と目を合わせる事すら出来ない自分が居る
何とか電源コードを解くことに集中したのだが、逆に変な絡まり方をしてしまった
私って不器用なんだね!




「う、うう…っ」
「あっ! 地味子ちゃん!」
「なかなか解けないんだけど、どうしよう。ハサミで切る?」
「そ、そんな事より! あの人が…!」
「ん?」




随分と早い回復だ
自分でも渾身の一撃だったと思うし、あれは痛いんじゃないかな
その証拠に、サイコパスレディはボロボロと涙を流していた




「い、痛い…あ、あんた、ほんと何者なのよ…!」




そう言えば彼女、ただの一般女性だった
大丈夫かな…ボコボコにしちゃったけど、まぁいい薬になったかな




「蛍介は返してもらいます」
「や…やめて!! 私のダーリンを奪わないで!!」
「別に貴女のじゃないんだけどなぁ」




ところでこれは、何時になったら解けるんだろうか
何処かにハサミでもあればいいのに




「ダーリンは私に優しくしてくれた! ダーリンが私の全てなの!」
「は、はぁ?」
「誰にも渡したくないの! 脳筋でお子様のあんたには解らないだろうけどねっ!」
「…酷い言われ様」




ビッチと言い、どうもこの人からの印象は良くないようだ
まあ、ビッチよりもお子様って言うのが合ってる気がするけどね




「どうせお子様ですよー」



私は貴女を知らないけれど、貴女も私を知らないよね
貴方に私の何が解るのやら…




「だ、誰かをこんなに好きになるなんて、ダーリンが初めてだったもの! 糞ビッチでお子様なあんたには解らないでしょうけどね!」
「またそれ? 否定はしないけどね」




というか、ビッチなのかお子様なのかどっちかに統一して欲しいものだ
確かに愛だの恋だの、私にはよく解らないよ

それでも、離したくないと言う気持ちは――解るつもりだ




「貴女の行動はちょっと行き過ぎています。時期に警察が来ますから、諦めて下さい」
「け、警察…!? 私が何をしたって言うのよ!!」
「充分罪な事をしてるんだけどなぁ」




そこはまあ、警察に頼むとするか
後は警察がくるまで、この女を逃がさないように見張らないとね




「ダーリン! 助けてダーリン!」
「ひ…っ!」
「蛍介をこんな目に遭わせたのに、彼に頼るつもり? 信じられない」




思わず深い溜め息が出た
当然蛍介だって彼女を助ける気はない
寧ろ、警察につき出す事が道理であった
あとどれぐらいで来てくれるかなぁ…




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