HERO GIRL

□私と新入生と嵐の転校生
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才源高校に入ったのは一年前の事
その時もこうして三人は、学校の前に立っていた




「今日から二年生だね」
「無事に進級出来てよかったな、地味子」
「うん!」



あっという間の一年だったと思うけど、よく考えたら色々と濃い一年だった気がする
そもそも『地味子ちゃん』の一件が原因だし、私が暴れたりしなければよかったんだ




「今年の目標は、大人しく過ごす事かな!」
「お前が? いや、無理だろ…」
「どういう事かな、翔瑠」
「地味子は元気いっぱいだからな。大人しいなんて想像出来ない」
「晃司まで!?」




幼馴染二人にそう言われてしまうと、流石にへこんだ
其処は応援してくれるんじゃないの

登校時間ともあり、続々と生徒達が校舎へと入って行く




「そう言えば、建築学科の一年に女子が入ったんだと」
「えっ、そうなんだ?」
「おう。ちょっと見に行ってみないか?」
「どんな子か気になるね! 晃司」
「ん? あぁ、そうだな」



あれ、意外と関心がないようだ
翔瑠はこんなにも興味津々だと言うのに
男だらけ建築学科にも、一輪の華が咲いたと喜ばないのかなぁ

自分の教室に行く前に、建築学科一年の教室へと向かう




「よしっ。覗いてみるか」
「そーっとだよ。そーっと…」




教室の扉をゆっくりと開けて中を覗く
堂々としていればいいのに、私も翔瑠もどうして挙動不審なのかな

そして、覗き込んだ教室内の光景は異様だった


新入生の初々しさとやら何処へやら
最早、貫禄すら滲み出ていた

何この教室、超怖いんですけど…!

こんな空間の中に、女の子なんて何処に居るの??
居たら居たで、可哀想すぎるんだけど!!




「どうした二人共?」
「あ、いや…女の子なんて何処にもいねぇぞ」
「居たのは怖いお兄さんばかりでした…!」
「…よし。逃げよう」



晃司の判断は素晴らしいと思う
でもね、向こうの一年生はもうこっちに気付いてしまったんだ



「うわぁ、目が合った…!!」
「地味子、俺の後ろに隠れていろっ」
「バ、バスコ…!」



晃司がお決まりのヒーローマンポーズで、私達を守ろうとしてくれている
それは嬉しいけれど、流石に入学したての新入生たちを病院送りにする訳にはいかない

喧嘩は程々に、だ




「なんだ?」
「二年?」
「バスコ…?」

「「初めまして!! 先輩!!」」




新入生一堂が、礼儀正しく頭まで下げてくれた
挨拶はしっかりと出来るらしい




「俺達はバスコ先輩に憧れて、建築学科に入りました!」
「おおっ。あれが有名なファイティングポーズ!」
「自分達も背中にバーンナックルのロゴマークを入れて良いっすか!?」




どうやら今年の一年生は、晃司を目当てに入って来たと言ったほうが正しいらしい
見た目はどうあれ、中身は優しい一年生達のようだ




「晃司、モテモテだね」
「男にモテても嬉しくねぇだろうけどな」
「確かに」

「諸葛孔明である翔瑠先輩ですね!」
「凄いっす。バスコ先輩の参謀っすね!」
「お、俺もかよ!?」




諸葛孔明って確か、頭のいい人だよね
この前の試験で学んだ気がするけれど、もう全然覚えてないや
晃司も翔瑠も一年生に取り囲まれて、たじたじだった

可哀想だけど慕われてるんだから、受け入れてあげなよ
あ、駄目だ。晃司がもう涙目になってる




「地味子…助けてくれ」
「地味子?」
「もしかして、あの人が…!」

「「初めまして、姐さん!!」」

「姐さんっ!?」




何これ、どういう状況?
今度は私にまで挨拶してくれたんだけど!

って言うか、姐さんて何…!?




「バスコ先輩の彼女さんですよね!」
「馬鹿っ。翔瑠先輩のだろっ!?」
「あー。どっちでもねぇけど…」



翔瑠の言う通りだ
それじゃあまるで私が二股をかけてるみたいじゃないか
何それ酷い




「バーンナックルのファーストレディ!」
「何それ意味解んない」
「それよりも『地味子ちゃん』動画見ました!!」
「さすが『ミス才源』ですね!」
「やめて。それただの黒歴史」



『地味子ちゃん』に『ミス才源』なんて、そんなものただの称号に過ぎない
何故か私まで取り囲まれてしまう始末だ
どうしよう、私はただ女の子を見に来ただけだったのに…

と、教室の奥で座ったままの子が一人だけ居るのに気づいた
その子と目が合った瞬間、何故か睨まれたような気がした
まだ会話すらしていないのに、私が一体何をしたんだろうか…




「ど、どうしたんだ。地味子?」
「解んない…何か奥の子に睨まれちゃった?」
「何?」
「あー、雨宮っすか?」
「雨宮?」




とある一年生が丁寧に教えてくれた




「あいつが雨宮 理央っす」
「も、もしかして女の子か!?」
「女の子?」
「ぷっ、翔瑠先輩、ウケる―!」




どうやら違うみたいだ
髪形はボーイッシュに短く、端正な顔立ちをしているけれど、男のようにも女のようにも見える
名前だけ聞けば、女の子なんだけどなぁ…




「何だ。結局ただの噂だったのね」
「悪い。俺の誤解だったのかもな」
「ううん、いいよー。そろそろ私も自分のクラスに行くね!」

「「お気をつけて!! 姐さん!!」」

「だから姐さんって何」




良い後輩たちが入ったようで、よかったね




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