HERO GIRL

□私と新入生と嵐の転校生
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今日は予定よりも早く家に帰ることが出来そうだ
お母さんに今から帰ると連絡を入れたところで、返事は直ぐに来た




「ん? 今日は遅いのよ…? あぁ、そうだった」



今日はお父さんもお母さんも遅いと言う事を、改めて知る
適当に返信をしたところで、考えるべきことは一つ
今日の夕食をどうするべきか…!




「適当にコンビニ弁当でも買って――お?」

お母さん『自分で必ず作る事』

「…娘の行動パターンはお見通しって訳ね」



最近、母親にご教授してもらいながら料理を習い始めている
まともに包丁すら握れなかった自分だが、徐々にその成長に兆しが見え始めていた
少なくとも、ご飯はちゃんと炊けるようになったよ!

…あれ、包丁関係なくない?

あとは、お味噌汁とサラダぐらい?
駄目だ、メインのおかずがない…!




「わ、私は一食分もまともに作れないのか…!」
「…何だあいつは」
「うん?」




校舎を出たあたりで、青いつなぎを着た生徒を見た
アレって今朝見た、一年生の子だよね

えぇと、確か名前は――




「あぁ、理央ちゃん」
「誰が理央ちゃんだ!」
「えっ、違うの…」
「雨宮って呼べ!」
「あ、はい」



おかしいな、私が先輩の筈なんだけどね
見れば見る程中性的な顔立ちだよね
性別聞いたら怒られるかなぁ



「な、何だよ?」
「あ、ごめん。ガン見してた」
「近いんだよっ!」
「ごめんなさいっ!?」




何でこんなに私達は言い合っているのだろうか
理央ちゃん…じゃなかった、雨宮とは初対面の筈なのに
そう言えば、今朝の教室でも睨まれたような気がする

あれ、私って絡まれてるの?
参ったなぁ…新学期早々、大人しくする目標を立てたと言うのに…




「あれ。地味子さん?」
「大木さん!」



その時、救世主と言わんばかりに大木さんが声を掛けてくれた
良かった、これで私も絡まれずに済むかもしれない
大木さんの身体は大きくて、身長も高い
雨宮や私からすれば、簡単に上から見下ろされてしまうほどだ



「な、仲間が居たのか…!」
「バーンナックルの人だよ。大木さんは」
「誰ですか。後輩?」
「うん。建築学科なんだって」
「…絡まれてるんですか?」



ジロッと雨宮を睨みつける大木さんに、最早たじたじだった




「く、くそっ…! バスコの仲間なら仕方ねぇ!」
「バスコ? 先輩をつけろ、後輩」
「うぐぐ…!」
「大丈夫だよ、大木さん。別に絡まれてないから」
「はい」
「ボ、ボディーガードかよ! ホント変わってねぇな、お前!」




変わってないとはどういう事だろうか
私は雨宮と何処かで会った事がある――?

いや、覚えがないんだけどな…



「おい。口の利き方に気をつけろ。地味子さんに対して」
「いいよ大木さん。私は気にしてないから」
「畜生…! 馬鹿にしやがって!」
「今年の目標はおとなしくするって言うのだから」
「は、はぁ…」



どうも大木さんの表情が怪しいが、もしかして私は大人しく出来ない子でも、思われているんだろうか



「さて、帰りにスーパー寄らなきゃ」
「買い物っすか?」
「うん。夕飯の買い出し。メインのおかずが決まらなくて…」
「お、おいっ?」
「あ、雨宮。またね」




雨宮には申し訳ないけど、今日はいろいろ忙しいんだ
メイン料理を作るとなると、私には難易度がとても高い
今の私の成功率はほんの一割だけだから、物凄く練習しないと――



「ハンバーグでも作ろうかなぁ」
「地味子さんが作るんすか?」
「うん」
「へぇ…いいなぁ」
「大概真っ黒焦げになるんだけどね。基本火力MAXだから」
「…焼き加減の問題なんすかね」




せめて。バイトの時間までには夕食を食べられるといいなぁ






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