HERO GIRL

□私と新入生と嵐の転校生
4ページ/7ページ


――あぁ、どうしよう

朝からこんな事になるなんて…!



「おいコラ。こっち見ろや」
「ひぃいいいっ!!」
「うるせぇ奴だな」
「ご、ごめんなさい…!」




二年生になって、漸く平穏な毎日が送れると思ったのに
どうして僕は、知らない奴に絡まれてるんだろうか
こんなに身体が大きくてガタイのいい奴、うちの学校に居たかな…

い、いや、それよりも!
誰か僕を助けてくれよ…!
学校までほど近い距離で、登校時間だから人もいっぱい通っている
でも皆、僕みたいになりたくないんだ
僕だったらきっと背けてしまうし…せめて、誰か一人でも…!




「キョロキョロしてんじゃねぇよ」
「ううっ…!」
「…森永?」



その時、救世主の声がした
こ、この声は…!




「あっ、地味子ちゃん!!」
「おはよー。もぐもぐもぐ…」




ト、トーストを齧りながら登校してる!?
何て古典的な!
でも地味子ちゃんだから可愛い…じゃなかった、時間がなかったのかな?




「何だ? 女かよ」
「もぐもぐもぐもぐ…」
「とりあえず、食うのやめろ!!」
「遅刻しそうなんだよね。だからゆっくり朝ご飯を食べられなかったんだ」




どんな状況でも決して食べるを止めない姿に、僕を絡んでいたこの男も呆れ顔だ




「遅刻ってお前…この時点でもう時間取られてるだろ」
「え」
「あいつらみたいに、無視しちまえばよかっただろうが」
「もぐもぐもぐもぐ…」




地味子ちゃんは相変わらずトーストを食べつつ、スマホを取り出して時間を確認してるようだった
僕もそれに習って、お気に入りの金ピカ腕時計を見る

…ああっ。僕も遅刻する!




「もぐもぐ…あぁ、本当だ…そろそろ朝のHRが始まるね…もぐもぐもぐ」
「こいつ…!! それでもなお食ってやがる!」
「ま、いいか」
「いいのかよっ!?」
「…ふぅ。ワルを制裁してましたって言えば、先生も許してくれるよね」



そ、そうなのかな?
でもうちの担任は地味子ちゃんに甘いところあるし…

あと、漸くご馳走さまでいいんだよね?



「あ? 誰がワルだって?」
「森永、もう行っていいよ」
「何勝手な事をしてんだ。あ?」
「先生にちょっと遅れるって言っといてね」
「う、うん!!!!」




それから僕は全力疾走でその場から逃げ出した
た、助かった! 地味子ちゃんのお蔭で本当に助かった!!!

涙で顔は濡れ、鼻水塗れだけど、あの場から逃げられたのは本当によかった!!





「おい。女…!!!」
「うん?」




目の前に大きな手が迫ってくる
頭で掴まれると解る前に、身体が自然に動いてそれを後ろステップで避ける




「――避けたっ!?」
「おお、意外と早い…!」
「このっ…!!」
「食後の運動にはいいかも…」
「こいつ…っ、俺の攻撃を全て避けてやがる…!?」




しかし、避けるだけしかしていないので、攻撃にそれが発展することはない
一応大人しくするが目標だからね、ホント
けれどいつまでもこうしている訳にはいかない
見たところこの人は制服を着ているし、学生さんなのかな




「ねぇねぇ、高校生?」
「あ? それがどうした!」
「体大きいね。ムキムキさんだ。でも、大木さんの方がいいなぁ」
「は? 勝手に品定めしてんじゃねぇよ。ふざけんな!」
「ところでもう終わっていい? 学校に遅れちゃう」




私はそんなに早く動いたつもりはないけれど、男の人は少しだけ息を乱し始めていた
そしてその間、一度も彼の手に捕らえられたことはない
きっと捕まったら終わりだと、頭で理解しているんだと思う




「くそっ…!!何なんだ、この女!」
「あ、終わり? よかった!」
「お前、俺が怖くねぇのかよ!」
「何で?」




思わずきょとんとする




「何でって…」
「強そうだなと思うけど、怖いとは思わないよ? いいなぁ、ムキムキ…」

「…」
「とりあえず学校行かなきゃ。お兄さんも学生さんなら、早く行った方がいいよ」
「あっ、てめぇ…!」




もう遅刻決定だけど、森永が上手く説明してくれているよね
私だからいいけど、これが他の女の子だったら確実に森永を制裁かな
女の子を放って逃げるなんて最低だもんね




「ちっ…そう言えばあの女の制服、転校先のだったな」





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ