HERO GIRL

□私と休日とあいつ再び
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髪は整ってほんの少し上機嫌になる
丁度お昼に差し掛かった頃だろうか
少々お腹が空いたのだが、この時間帯は度のお店もフードコートも人でいっぱいだろう
たまには外で食べるのもいいのだが、さっさと買い物をして家に帰るのもありだろうか

最近はお昼をお母さん監修の下、作っている
まだまだ失敗が成功を上回っている分、母親の溜息も多い




「結局、この前のハンバーグも見事に焦がしちゃったんだよねぇ」




思わず私の方まで溜息を吐いてしまった
やはり火力MAXが原因なのだろうか
だってハンバーグって焼くものでしょ、焦げ目だってつくじゃん




「…次はもっとうまくやろう」
「おっ。地味子ちゃん!?」
「ん? …うわ、道也だ」




思わず出てきたのは自分の同級生の名前だった
まさか休日の、こんな人の多い中で出会うとは思わなかった

…あれ、なんかこんなこと前にもあったような気がする

同じ場所、同じ場面で




「地味子ちゃんだよなっ!? うわっ、何でそんなに可愛くなってんの!? マジヤバイ! 俺の天使!」

「…天使って何」

「こんな所で会うなんて奇遇じゃん! そう言えば去年も会ったし…も、もしかしてこれって運命っ!?」




あぁ、そうだ
去年もこうして休日に道也と出会ってしまったんだ
何て事だ、歴史は繰り返すのでしょうか




「そんなに可愛くして、俺に会う事を見越して…」
「そんな訳ないから」
「ううっ…」
「道也は何で此処にいるの? もしかして彼女と? じゃあ私は邪魔だね。ばいばい」




言うだけ言って、スタスタと立ち去ろうとする
休日に此処にいるのは買い物客か家族サービスか暇つぶしだけだ
そんな私を道也は一生懸命引き止めようとする




「ちょ、ちょちょちょっと待って! まだ何も言ってないし、彼女いないし!」
「だよね。知ってる」
「それはそれで悲しいんだけどっ!?」




休日なのに、何だか学校に居るのと変わりない気がした



「か、母ちゃんの誕プレを買いに来たんだよ」
「わぉ。意外と普通…」
「意外とって何!?」
「偉いじゃん。そう言えば道也ってお母さん想いだったね」
「へへ、照れるぜ」




道也はそう言いながら鼻を擦った
意外とお母さんを大事にしている辺り、道也って優しい人なんだと思う
まあ、『坂木事件』には苦労させられたけど、あれ以来いじめとかもしなくなったし…




「あっ、その…よかったら一緒に選んでくれねぇか?」
「えっ、私が?」
「母ちゃんが喜びそうな物ってよく解んなくてよぉ」
「私も解らないけど…まあ、付き合ってもいいよ」
「マジかっ!? よっしゃ!! 地味子ちゃんとデートぉおおお!!」




道也はガッツポーズをしていたけれど、やっぱり男の子の目線よりも女の子が居た方がいいのかな
それなら私も協力してあげない事もないけど
これってデートなの? 付き合ってなくてもデートって言うの?

美容院の後の事はノープランだったから丁度いい
特に欲しい服もないし、家のクローゼットにはまだ紅輝が買ってくれた服がたくさんある
中には未開封や手つかずの物もあって、ちょっとしたお店が開けるぐらいだ

勿体ないから全部着ないととは思うけど…
中にはいつ着るんだろうと言うようなものもあって、其処は我がファッションリーダーたるお母さんに全部任せている




「じゃあ、行こうぜっ」
「…この手は何。握手?」
「いやっ、手を繋がないかなぁと。ま、迷子防止?」
「迷子になったら電話してね」
「あっ、地味子ちゃーん!」




何故道也と手を繋がないといけないのだろうか
さっさと行くとしよう、お店はいっぱいあっても時間が足りなさそうだ


様々なお店が立ち並ぶショッピングモールで、道也のお母さんに贈るプレゼントを探す
雑貨屋、服屋、ブランド品、日用品など、色々と軒を連ねているけれど、どれもピンとくるものがない




「うーん…どうすっかなぁ」
「去年はどんなのをあげたの?」
「ハンカチにした。匂いの付いた金木犀の奴な」
「…道也にしては、チョイスがいいね」
「だろ?」




そのドヤ顔は気に食わないので、今手にしてるスリッパで引っ叩いてもいいかな?
やっぱ駄目かぁ、お店の人に悪いもんね
適当な場所に戻して雑貨店を見回るけれど、此処でも道也のお眼鏡に適うのはなかったようだ




「次行ってみようか。あのお店は何だろう」
「…よし。あの店なら地味子ちゃんが居るから入れる!」



何故か意気揚々と店の中に突っ込んでいく道也
一体何の店――あ、此処って下着屋さん!?

待った! 道也ストップだ!




「い、いやいやいやっ。私、こんな店は入れないよ!」
「何でだよ。地味子ちゃん女の子だろ!」
「そりゃそうだけど…道也、一人で行ってきてよっ」
「普通立場逆じゃねっ!?」




店の入り口でそんなやる取りをする二人に、中に居た店員さんが驚いたように此方を見ていた





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