HERO GIRL

□私と休日とあいつ再び
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「…何やってんだよ、お前ら」
「え、流星?」
「なんでお前が?」




聞き覚えのある声に振り返ると、何と流星が居た
私服でキャップを目深に被り、顔を隠しているように見える



「お前らこそ…まさかデートか?」
「そ、そうみえるかっ!?」
「そんな訳ないじゃん」
「はっ。だろーな」
「流星こそ何で? 此処は下着屋さんだよ?」




男一人では入ることを憚れる空間には、最初こそ流星の姿はなかったと思う




「…んなもん知ってるよ。中に瑞希が居るんだよ」
「えっ、そうなの?」
「あっ、地味子―!」
「瑞希ちゃーん!」




店の中から手を振る瑞希ちゃんが居たので、流されるままに店内に入って行った
残された道也も入ろうとするけれど、それを止めたのは流星だった




「おい。何処に行くつもりだ」
「何処って、中で地味子ちゃんの下着を選びに…」
「お前、ホント最低だなっ」
「はぁ? ケンカ売ってんのかよ。俺の天使だぞ」
「意味解んねぇよお前」




店の外では、道也と流星が睨み合っている
何処でもやることは変わらないようだが、どうせ流星の一人勝ちだろう




「なぁに。道也と一緒に来たの?」
「ううん、途中でで合流しただけ。お母さんの誕プレを買いに来たんだって」
「へぇ。道也がねぇ」



だが道也を相手するのも面倒なのか、流星はふいっと顔を逸らしてしまった




「ふふっ」
「瑞希ちゃん?」
「流星ね、私と居る時は絶対に喧嘩をしないのよ。約束を守ってくれているの」
「へぇ…そう言えば、自分から喧嘩を吹っかけなくなったよね」
「うん。流星も変わったんだなぁって」




数あるアイテムを選びながら、瑞希ちゃんの顔は本当に嬉しそうだった
彼女が嬉しいと私も嬉しいと、手持無沙汰に同じようにアイテムを眺める

…スケスケの下着を手にとってしまった
見なかったことにしよう




「地味子は道也と来たの?」
「ううん、たまたま。美容院に行った帰りなんだ」
「そう言えばいつもより可愛くなってるわね」
「か、かわ…? 何かエステとかネイルもして貰っちゃった」
「えっ。高かったんじゃない?」
「タダだったよ。幾らか解らないけど」
「えぇっ!?」




瑞希ちゃんが言うには、いつも言っている美容院がなかなかお洒落な所で予約待ちが多いそうだ
私の時はいつも簡単に通してくれるんだけどな
そう言えば待っている人が何人かいたっけ

それにマッサージやエステもそれなりの金額をするのに、無料と言う事にも驚かれた
特別優待券を使うといつもそうだから、値段とか気にしたことないんだよね




「地味子…凄いのね」
「そうかなぁ。そう言う瑞希ちゃんはデート?」

「そんなんじゃないわよ。流星はただの荷物持ち。もうすぐ遠足でしょ、新しい服が欲しいなと思って」




近い内に、学校では遠足に行く事になっている
何処かの遊園地に遊びに行く予定だが、何年ぶりになるだろうか
とても有名な場所らしく、行くのが私も今から楽しみだったりする

でも、今選んでるカゴ一杯の下着類は全部買うの?




「地味子のも選んであげようか?」
「えっ、いや、いいよー。ほらっ、前に選んでくれたじゃん」
「多分また大きくなってると思うけど…」
「何処見て言ってるの瑞希ちゃん?」




きゃあきゃあと店の中で笑いあう二人を見て、流星がまだまかかりそうだなと溜息を吐いた




「おい。一服しに行くか?」

「うーん…俺は、それよりももっと右の赤や黒とかが似合うと思うんだけどなぁ…あっ、それそれ、手に取ったやつ!」

「…一人で行くわ」



店の外からでも会話に参加しようとする道也を、流星は他人の振りすることにした




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