HERO GIRL

□私と幼馴染と踏み出す一歩
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――その後

学食では地味子とバスコ、翔瑠の三人が揃ってお昼を食べる姿があった



「幻パンゲット!」
「おぉっ! 凄いぞ地味子!」
「まーたパンかよ。飽きねぇな」



何も知らない人から見れば、その光景は『いつも仲良しな幼馴染』と言ったところだろうか
だが、一部の人間はその光景に一抹の不安と疑問を感じていた




「「(――あれから、バスコの告白はどうなったのだろう…!!)」」



そもそも告白かどうかも定かではないが、彼らの中ではすでに告白と定着されている
だが、その結果を聞くに聞けないまま、バーンナックルの面々は自分の昼ご飯を食しつつ、チラチラと三人を窺うしかなかった

そんな中、誰も何も言わないままの状況に、やきもきするのは雨宮だった
当たり前のように同じテーブルにつき、昼食を取っているのだが、三人が気になっていて箸が全く進んでいない




「あ、あいつとバスコはどうなったんだっ!? なんであんなにニコニコしてんだよ…っ!」
「食わないと伸びるぞ」
「気になりませんかっ!? あの三人! 特に地味子とバスコ!」
「…気になるなら自分で聞け、後輩」
「それが出来ないから言ってるんでしょーが! 大木先輩も気になるでしょ!?」
「俺だって地味子さんに聞けないんだ。怖くてな…」
「な、泣いてる――!?」




いつもは騒がしい食堂も、このテーブルに座る人達にかかれば、途端にお通夜会場に変わってしまうみたいだ
さっきからずるずると啜る音しか聞こえないけど、全員ラーメンを食べているなんて、本当に仲がいいんだね皆

こそこそと大木さんと雨宮が話しているみたいだけど、二人はいつの間に仲良くなったんだろう




「もぐもぐ…今日は皆、静かだね?」
「珍しいな。どうしたんだ?」
「そう言う日もあるだろ。さっさと飯食おうぜ」
「そうだねっ。食後は軽い運動をしないと…最近ちょっと筋トレを怠ってたからなぁ」
「体調が悪かったんだから、仕方がないだろ?」
「もう大丈夫なのか、地味子は」
「うん! 明日からまた頑張るよっ」




私の体調は、機嫌と共にすこぶる好調だった
寝不足だった日々も、いつの間にか解消されていた





いつもの三人


――幼馴染


いつもの関係だった





「よ、よぉ。元気か地味子」
「んむ?」




其処へやって来たのはグラサンだった
珍しく突っかかって来ないな‥寧ろ緊張しているように見えるのだが、何故だろうか

そう言えば、あの時のお礼をまだ言ってなかった――!



「もう大丈夫なのかよ?」
「あ、この前はありがとう。すっかり良くなったよ!」
「そ、そうか」
「グラサン…貴仁が運んでくれたんだってね。うちの担任が教えてくれたよ」
「と、とうとう名前で…!」




先程までとは打って変わって、ガッツポーズをし出した貴仁に、パンを頬張って首を傾げる
助けてもらったんだし、名前をそろそろ憶えて行かないと悪いよね、うん

そんな考えを露ほど知らず、貴仁はにやりと笑う


――これで確定だ

こいつは俺に惚れている!

何故ならあの時、俺は…告白されたからだ!!
今も名前で呼んだし、それしかないっ

手元にはあいつの好きそうなアクション映画のチケットがある

口説けばきっと…!




「――映画?」
「お、おう。次の日曜日行かねぇ?」
「わ。これ私の好きな映画だー」
「…っし!!」
「何故にガッツポーズ?」
「き、気にすんな」




バスコと翔瑠が睨んでいるが…へっ、恐くねぇぜ!

お前も、勿論行くだろ?
行くよなっ?



「うーん…悪いけど無理なんだ」
「へ?」
「その日は晃司達と約束があるから」
「な、何ぃっ!?」




呆気なく返されてしまったチケットが、手の中でクシャっとなる

どういう事だ…

こんな展開、まるで予想してなかったぜ…!!



「先に約束したのは俺達だ」
「…残念だったな?」
「うぐぐぐ…!」



更にチケットは握り締められ、見るも無残になっていることに貴仁は気付かない

勿体ないよ、誰か誘って行けばいいのに…マドンナさんとかさ



「ぷっ。だから言ったじゃない、フラれるのがオチだって」
「マドンナ…!」
「あのラブラブっぷりが見えないの?」
「俺には目の前が霞んで見えやしないぜちくしょぉおおお!」
「泣いてるからでしょ」




貴仁の絶叫が木霊する
皆が何だと振り返り、物凄く注目を集めていた

さっきまでお通夜会場だったのに、バーンナックルの皆までもが騒ぎ出している



「さ、三人でデートですかっ!?」
「デート? ただ公園で筋トレするだけだよ?」
「休日を使ってする事!?」
「え。いつもの事だよね?」
「あぁ」
「おう」




そう、私達にとってはいつもの事だ




「あ、マドンナさんの言っていた事、何となく解った気がします」
「何となくなのね…まあよかったのかしら」
「ありがとう! お姉様って呼んでもいいですか?」
「嫌に決まってるじゃない」




おっふ。即答で断られてしまった
まぁ、彼女とはまだ知り合ったばかりみたいなものだし、これから仲良くなっていけばいいよねっ



「この子は馬鹿なのかしら…」
「地味子は馬鹿じゃない。馬鹿にするな」
「いや、馬鹿だろ」



どっちが例の男なんだろう
晃司って言ってたかな
こっちの馬鹿に聞いたら解るかしら




「マドンナ。映画のチケットあるんだけど、行くか?」
「…最低な誘い方だけどいいわよ。暇だし」




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