HERO GIRL

□私と写真と思い出
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「私もあるよっ。中学の時の写真!」



いつの間にか流れは、中学時代の写真公開となっていた
美怜ちゃんが見せてくれたのは、彼女が可愛く映っている写真である

それを見ていち早く反応をしたのは道也だった



「自撮りかよ!」
「あざといなお前」
「この頃は可愛さを追求してたのっ!」



なるほど、背景と言い美怜ちゃんの可愛さと言い、果てしなく何かを追及していたのが見て取れる




「でも、顔は今とあまり変わってないよね?」
「うん、そうよね」
「えっ。結構変わったと思うんだけどなぁ、私!」




現在の彼女と過去の彼女を見比べてみても、その差に変わりはない気がした
寧ろ、過去の方が何かを追求しすぎて、現在が霞んで見える
間違い探しとしてみたら、一つだけ見つけたけれど…



「どっちかってーと、今の方が胸はでけぇな」
「何処見て言ってんの!?」
「道也、サイテー!」
「口に出さないでよかった」



運良く道也が口にしてくれたおかげで、私への集中砲火は免れたようだ
瑞希ちゃんと美怜ちゃんに責められるのは、私もちょっと嫌だ

ふと瑞希ちゃんが蛍介の方を向いた




「蛍介の中学の頃ってどんな感じ?」
「えっ、僕?」
「あっ。蛍介の中学の写真とか見てみたいかもー!」
「どうせイケメンなんだろ、知ってる」



流星が見る前から悪態を吐き始めた
美怜ちゃんが物凄く興味を示していたけれど、それには私も同意だ

流星や私の様に高校デビューだったりして?
それとも彼の言う通り、今も昔も変わらずのイケメンぶりなのかな?

相変わらず、私にはイケメンがよく解らないけどさ



「えっと…スマホに自分の写真はないんだ。家にもアルバムはないし」
「えっ。一枚も?」
「その、引っ越して来る時に、実家に全部置いて来たから…」
「そっか。蛍介って一人暮らしだもんね」
「蛍ちゃんと暮らしてるから、二人でしょ」
「あぁ、うん。そうなんだ」




高校生なのに親元から離れて一人暮らしなんて、本当に蛍介は凄いと思う
私は一向に自炊すらままならないから、一人暮らしなんてとてもじゃないけど始められない

その前に、お父さんが泣いて許してくれないんじゃないかな



「紅輝は見た事ある? 前に蛍介の実家に行ってたよね」
「(ふるふる)」
「えっ、ないの? そっかー」
「あーん! 見たーい!」
「み、美怜ちゃん。どうどう…!」



残念ながら、蛍介の昔の写真は見られないようだ
美怜ちゃんが物凄く悔しがっていた
そんな彼女を宥めていると、私の隣で静かに本を読んでいた明里ちゃんが、顔をあげた




「あ、ごめん。煩くしちゃったよね」
「いいえ。大丈夫よ、読み終わったところだから」
「ねぇねぇ。明里の中学の頃はどんな感じ?」
「ぼ、僕も気になるな」



蛍介が明里ちゃんに興味を示していたが、彼女の表情は曇っていた

明里ちゃん、蛍介の事が苦手なのかな?
遊園地では二人で回っていたように記憶しているけど

それとも昔の話を振ったのが不味かったのかも…
私、明里ちゃんの事ってよく考えたら全然知らないんだよね




「…写真に残すことは好きじゃないから、全部捨てたわ」
「えっ!?」
「それはまた思い切ったわね…」
「きゃー! 明里ってばアグレッシブね」



何故か美怜ちゃんが興奮気味に両手をパチンと合わせた
どうも遊園地で彼女に助けてもらってから、二人はもっと仲が良くなったらしい
とても嬉しい事だけどねっ



「えっ。そうなの? ごめんね。ホントは嫌だったんだ!」



それに気づかないで、私は明里ちゃんと何度も写真を撮っていたよ
嫌がる事を何度もし続けたし、もしかしたら彼女に嫌われているんじゃ――



「ホントにごめん!」
「い、いいのよ…それに昔の話だから。今はいいの」
「ホントにホント? また撮ってもいい?」
「えぇ、いいわよ」
「やったー!」



正式に許可を頂いたから、これからまた写真を撮れる事を嬉しく思った




「でも衝撃的だったのは、地味子の写真よね」
「え、そうかな」
「そうそうっ。他にも昔の写真ってないの?」
「えぇと、中学生の時ぐらいかなぁ、此処に在るの」



スマホを持ったのは中学からだから、それ以前の写真は家に帰ればアルバムとして保管してある

今は殆どアルバム何て開くことはないし、それもお父さんの部屋あるから、あまり入る事もない
撮っていたのはお父さんで、今は鳴りを潜めているけれど一時期は本当に酷かった

いつでも何処でも、私やお母さんの写真ばかり撮っていたんだから
その癖、自分の写真は数えるほどしかないって言うね



「小さい時とか酷かったよ。お父さんがアルバムを何冊も作ってたもん。しかも年々増えて行ってさー」

「地味子ちゃんのこと、本当に大好きなんだね。お父さん」
「溺愛しすぎて、本当に困り果ててるんだよ…」



写真

それは昔を思い返すのに役立つものだ

その一枚だけで、ありとあらゆる懐かしい思い出が蘇る


そして、今を生きる証にもなる――





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