HERO GIRL

□超絶美人と私と…くまさん?
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結局お父さんは涙目のまま唸り続けた
朝食なんて放って置いて、今すぐに駆け込めばいいのに、食事中に席を立つのは行儀が悪いとか言って聞かなかった

うんうん唸り続けられる方が迷惑なんだけどなー



「でも、少し家を空けていたら成長しているなんて…偉いわね」
「えへへ」



やった、また褒められた
家を空ける事はさほど珍しい事でもないし、もう慣れている

次に会う時はもっともっと成長しているといいなぁ
料理のレパートリーもいいけれど、ちゃんと味付けとかも勉強して――



「じゃあお父さんは家を空けない!」
「は?」
「あなた、何言ってるの?」

「だって家を空けて娘が成長するなんて嫌だ。成長を見守るお父さんの楽しみが、無くなっちゃうじゃないか」



お父さんは、いきなりそんな事を言い出した



「小さい頃から執拗に見守り続けてきたのに、まだ足りないの?」



お母さんの言う通りだ
娘を溺愛しすぎて防犯ブザーも涙目な程、お父さんはかげで…いや、堂々と見守っていた

涙目だったのは、翔瑠もだったかなぁ




「これから先、もっと成長していく娘を見逃すなん勿体無いよ。…はっ。居ない間にお嫁に行っちゃうかもしれない!」

「またそれー? お嫁にはまだ早いんでしょ。ねー。お母さん」
「そうねぇ」
「むぐむぐ…あれ、もうこんな時間か」



おっと、のんびり食べている場合じゃなかった
そろそろ準備しないと…



「次に帰って来る時は、晃司君のお嫁さんになってるかもねぇ」
「ぶはっ!?」
「ごほっ!?」
「あらあら。二人揃って…」



ゲホゲホと私もお父さんも噎せていた
それはもう盛大に

気を利かせてお母さんがお茶を差し出してくれたけれど、今はそれどころじゃない
動揺しすぎて思わずテーブルを叩いたら、ガチャンと食器が音を立てた



「お、お母さん…何言ってるのっ!?」
「テーブルを叩かないの。行儀が悪いでしょう?」



そして怒られた



「…ちょっと晃司君の家に行ってくる」
「え?」
「お父さん、逮捕なんて駄目よ」
「逮捕!?」



逮捕って何!?

お父さんは席を立ちあがると、本当に出掛けようとしていた
間違ってもトイレに行く訳ではないようだ



「大丈夫。職質するだけだから」
「『休日モード』でしょ。今日は」
「緊急に応じて出動するのが、刑事さんなんだよ。そうしないと地味子が晃司君にさらわれる」
「…おっふ」



ヤバい、眼がマジだ…!

職質とか言って、確実に牢屋にぶち込むつもりだ
逃げて晃司、超逃げて!



「やめて頂戴。娘を前科者の妻にする気?」
「うう…っ! 晃司君にはまだ渡さないぞっ」
「まだって事はいつかは渡すのね。良かったわね、地味子」



何言ってんの、この二人

朝の食卓が賑やか過ぎて、ちょっと困る
一人で食べると寂しかったり、味気なかったりしたけれど、これはこれで面倒臭い

特にお父さんが



「あー! 私、用事あるんだった! 準備して行ってきまーす!」
「え。何処行くの。お父さんも行く」
「その前に、早くトイレに引き籠れば?」



さっきから脂汗が酷いのは、我慢し続けている証拠だよね?
そんなに強力だったのかな、私のダークマター…卵焼き!




「…帰って来る時には、晃司君と一緒に結婚のご挨拶かしら。どうしましょうね、あなた?」
「地味子、行かないで!!!」
「明里さんと遊んでくるだけだもんっ!!」



久し振りにお茶に誘われたんだ!
美味しいケーキを食べに行きましょうって言われたし、断る理由がないよねっ



「あら、お友達?」
「うんっ。女の子だよ女の子! そう言う訳だから、ご馳走様!」




殆ど逃げる様に部屋に引っこんだけれど、もう後はお母さんに任せよう



「…昔に比べたら、地味子も成長したわね」
「明里さん――あぁ、あの綺麗な子か」
「…へぇ」
「勿論お母さんの方が超絶綺麗だよ?」
「…慌てずに言うところがあなたらしいわ」
「???」



うちの両親は、超がつく程仲がいい円満夫婦だ
こう言うのをバカップルって言うのかな?

ちょっと違うか





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