HERO GIRL

□超絶美人と私と…くまさん?
3ページ/6ページ




「ハニー。好きな物を選んでいいよ」

「どうしようー。迷っちゃう! 新作は欠かせないとして…食べきれるかなぁ?」
「勿論お土産にするのもありさ!」
「やーん。ありがとうー! 嬉しい!」
「HAHAHA!」



…ホントに常連さんだったのか、あの二人
翔瑠の言う通りだ



「うぷぷ。可愛いくまさんだねっ」
「地味子、笑うんじゃねぇ…」



そして翔瑠は、さっきからあのバカップル…否、俳優さんと女優さんを相手に、引き攣った笑いで接客をしている
駄目だよ、ちゃんと営業スマイルをしなきゃ
せっかく可愛いくまの頭飾りをしてるんだからさ

…あれ。くま?



「オンとオフで全然違うんだなぁ…」



芸能界ってストレスが多いって聞くし、女優さんも羽を伸ばしている事だろう
そんな事を思いながら、幾つかのケーキと紅茶とコーヒーをテーブルに運ぶ
ちなみに声を掛けないのは、デートの邪魔をしたくないからだ

テラス席へと足を向ければ、超絶美人が待つテーブルへ戻る



「明里さん。お待たせ―!」
「ありがとう。私も行くって言ったのに…」
「いやいや。明里さんは此処で座ってくれれば、絵になるんで」
「何よそれ?」



今日はいつものカフェで明里さんと会っていた
彼女と会う時は、大体カフェかコンビニが多い
最近はお互い忙しいせいもあったからか、休日に遊ぶなんて事も、物凄い久しぶりだ

ついでに言うと、此処のケーキも久しぶり
天気がいいのでテラス席を選んで正解だった
オープンカフェのいいところだ



「そう言えば」
「ん?」
「蛍介さんの家に行ったんですって?」
「明里さん…近すぎです。嬉しいですけど」



突然前のめりなって、明里さんは聞いて来た
何をそんなに真剣な表情なのか
明里さんのケーキはちゃんと分けてあるから、大丈夫だよ?
え、そう言う訳じゃない?



「い、行ったけど…あれ、なんで知ってるんですか?」

「あ、明里から聞いたのよっ。クラスで話しているのを聞いたって」
「あぁ、そうか。あの時隣に居たんだっけ」



会話にこそ参加はしなかったけれど、私の隣で彼女は本を読んでいた気がする
美怜ちゃんの印象が強烈過ぎて、助けすら求められなかったんだ




「蛍ちゃんのお母さんと友達になったんだー。おかげで煮物スキルが上がったよ」



朝の食卓で、我が家はちょっとした一波乱があった事は、内緒にしておこう



「そ、そう。それは良かったわね」
「うんっ。あ、ケーキ美味しい!」
「…その、あの男は居た?」
「むぐむぐ…あの男? 誰?」
「長谷川 蛍介よ。貴女の同級生の方」



あぁ、蛍介か

明里さんは、蛍ちゃんよりも蛍介の事が気になるのかな



「うん。居たよ」
「居たのっ!?」
「何でそんなに驚いてるの? 二人で住んでるんだから当然じゃ?」
「そ、そうね…」



そう、家には蛍ちゃんとおばさん、そして蛍介が居た



「あー、でも、居たけど寝てたんだ」
「ね、寝てた?」
「ご飯が出来ても起きてくれなくて、起こそうとしたら蛍ちゃんに止められちゃった」
「…!」

「まあ、蛍介もモデルとかなんか忙しそうだしね。疲れてるだろうって。むぐむぐ…明里さん、ケーキ美味しいよ」



未だにケーキもコーヒにも手を付けない明里さん
何かを考え込んでいたようだけど、どうしたんだろう


余りの美味しさに、私は早くも二個目に突入していた
こんなに美味しいなら、もう一個くらい頼んでも…うう、駄目かな

明里さんはずっと難しい顔をしている
美人が悩む姿も絵になるなぁ、何て思っていたらもうケーキが無くなっていた

何これ、イリュージョン?




「も、もう一個だけ頼もうかな…」



そして人はどんどん絶望へと堕ちて行くのだ

体重計に乗るのが怖くて、ケーキが食べられるか!



「明里さん?」

「あ、ごめんなさい。考え事していて…って、地味子。ケーキは何処に消えたの?」

「あー、全部食べちゃった。そしてまだ食べ足りないみたい」
「…いくらミニサイズだからって。もう、私のも食べる?」

「いやいやっ。大丈夫! ちゃんと買ってくるから!」
「『食べない』と言う選択肢はないのね」



それは無理だ
此処のケーキはミニサイズが売りで、ペロッと平らげてしまうから

そして彼女のケーキまで貰うほど、私は図々しくない
ちゃんと自分で買うと言う良識ぐらいはある

朝ご飯食べてから、そんなに時間経ってないんだけどなぁ…




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ