HERO GIRLA

□幼馴染と喧嘩と恋する乙女
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「――って言うか、あの子誰? 何で蛍介って呼んでるの?」



その時、美怜ちゃんがスクワットをする彼を見て言い出した



「え?」
「何言ってんだよ」
「ははは。美怜、つまらない冗談はよせ」
「嘘でしょ。皆、気付いてないの…?」



皆は驚いていたけれど、私も少し変だなと思った節がある
それに気づいていたのは、どうやら美怜ちゃんも同じようだ



「えっと…一応、変だなって思う」
「そうよねっ!?」
「何処がだよ。どっから見ても蛍介じゃ――」



――ちりん



「おっ。皆、揃ってるねぇ」



幾度目かのベルの音が鳴ったかと思えば、其処に居たのは森永と敏斗、そして蛍ちゃんだった

あっちにも蛍ちゃんで、こっちにも蛍ちゃん――


「蛍ちゃんが…増えた!?」
「け、蛍介が二人だと!?」
「代わってくれてありがとね、蛍太」
「おう…」
「け、蛍太?」



その人――蛍太は、またもやゼイゼイ言って泣いていた
スクワットが余程きつかったんだろうか
普段蛍ちゃんがやっていることを、彼が代わりにやっていたんだったら…それはもう泣く理由もわかる気がする



「お前、偽物かっ!?」
「に、偽物?」
「違うよバスコ。蛍太は僕の従兄弟なんだ」
「コンビニのバイトがこんなにきちぃとは…都会って怖ぇ」

「えーっと。此処は特別なコンビニだから…」

「あいつ、よくやってるよな…」



間違っても、余所のコンビニはスクワット1000回なんてしない



「よく解らないけど、皆が俺の事を蛍介って呼ぶんだ」
「だってそっくりだもん」



本当にそっくりだ
私も半信半疑だったけど、美怜ちゃんが指摘してくれなかった気づかなかった



「(まあ、僕の代わりを頼んだのは確かだけどね)」
「おぉ、お前が蛍太か! バーンナックルのリーダーのとマブの!」
「そのリーダーはお前だろ」
「そうだった!」
「やっぱ馬鹿だな、こいつ」



それから蛍ちゃんの偽物――じゃなくて、蛍太は敏斗の大ファンということが解った
紹介されるなり興奮して、サインを強請っている
そして敏斗は驚きと戸惑いでたじたじだった
彼のような熱狂的なファンは、意外と初めてだと言う



「それにしても…どうして解ったの、美怜?」
「え?」
「私はいつもと呼び方が違うから、アレって思ったんだけど」
「どう見ても別人でしょ」



そう言って蛍ちゃんを見つめる彼女の顔は…何と言うか、恋をする乙女のようだった
あ、もう恋してるんだっけ?




「…ふーん?」
「な、何よ。地味子はさっさとお髭の人と仲直りすれば??」
「あ。もう帰るね」
「地味子、送る」
「要らない。ばいばい、また明日!」
「…!?」
「くううううっ!!!」



誰か速く何とかしろ――

そんな声が聞こえたが、無視をした




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