HERO GIRL

□私と学園祭
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――クラスでは、来たる日の学園祭に向けて着々と準備が進められていた

地味子のクラスであるファッション学科も、毎日準備に追われて授業ですら延期になっている
それほどうちの学校の学園祭は有名で、目玉なイベントが目白押しだ




「蛍介か流星のどっちかドレコン出てよ」
「えっ!?」
「なんで俺が?」




ドレコン――奴隷オークションなるものには学科ごとに男子が選出される
候補として選ばれたのは蛍介と流星で、どちらも顔は整っているからと推されたのだ




「冗談じゃねえ。誰がそんなの出るか!」
「ぼ、僕も嫌だなぁ…」
「じゃあ、出ない方は何か出店やってよね」
「それはそれで…嫌だな。学園祭とかよく解らないし」




蛍介は呟いて流星を見た
彼もまた自身と葛藤しているようで、その表情は険しい
隣で見ている分にはもうガクブルする蛍介だった




「ドレコンは任せるとして、次はミスコンだけど――」
「瑞希に出させろ! それで一位が取れる。完璧だ!」
「ちょっと流星。何言ってんの? 馬鹿なの?」
「瑞希より優れた女なんていねぇ!!!」

「「はあああっ!!?」」




流星のトンデモ発言に、クラス中の全女子が泣いた――




「全くもう…っ。ミスコンなんてやーよ、あたし」
「くすくす、でも満更でもないんでしょー。いいなぁ、代わりにあたしが出よっか」
「ブスは出んな。負けるに決まってんだろ」




それほど綺麗とは言えない女子が立候補する
速攻却下されてショックを受けていた
まさか本当にイケるとでも思っていたのだろうか…




「おーい。ドレコンよりミスコンの方に力入れろよー。何せ賞金がそのままクラス予算に入るんだからな」

「えっ。施設に寄付されるんじゃないんですか?」
「ん、そうだったか…? 去年は、クラス全員で焼肉行ってパーッと使っちまったけどな」

「ええっ!?」
「…先生の仕業でしたか…」
「おおおっ…いや、ちゃんと寄付しましたよ、えぇっ」




担任と副担任が揃ってクラスに居る事は珍しい
それに聞けば、この担任がいたクラスに去年のミスコンがいたらしい

その賞金の殆どは焼肉と聞いて、男子はおおお!!と声を上げる




「…随分と金額が少ないと思ってましたが…」
「だっ、誰が出るんだ? 瑞希か? 美怜か? 唯か? そこの寝てるやつ! ちゃんと参加しろ−っ」

「せんせー、名無しさん寝てまーす」
「この際もうそいつでいいだろ。黙ってたら顔はいいし」

「えっ、地味子ちゃんミスコン出るのか!? じゃあ全財産叩いてでも落札する!!」




そして、ゆくゆくは――あんなことやこーんな事を、したい…!!




「ちなみにお前、いくら出すの?」
「1万円なら出せるぜ、俺!」
「はっはっは!! 去年のミスコンは20万で落札されたぞー」
「マジか…!!!」



がっくりと項垂れる道也
1万円じゃ足元にも及ばないのは明らかだった

え。ミスコンってそんなに大金出す人いるの?
何それ怖い ミスコン怖い




「でも、女子に値段をつけるなんてひどくなーい? しかも名無しさんでしょ。だったらやっぱあたし出るー!」
「プライスレスに決まってんだろ」
「流星、ひっどーい!」
「その点、まだ地味子の方が…イケんじゃねーの」




瑞希ほどじゃねぇけど、顔はいいほうだし…
呟けば、瑞希が賛同してくれた




「そうねぇ。ちゃんとメイクして髪を整えればいいと思うんだけど、最近じゃそれも面倒臭がってるみたい」

「私たちがきちんとさせるし、地味子がミスコン選出ってことでいいよねっ!?」
「えぇと…皆はどうかしら?」




誰も何も言わないのは、遠慮しているのか、他人任せなのか――

すると、副担任の先生はニコッと笑った




「自分を見つめなおすいいチャンスよ。誰もが綺麗になれるし、誰もが主役になれるの。その為なら先生もお手伝いしますよ」

「綺麗に…なれるかな」
「主役に…!」




引っ込み思案な女子たちに、少しだけ希望が持たされる
しかしその手が挙げられることは、直ぐに出来ないようだ

それが解っていたのか、副担任の先生はまた微笑む
その視線の先には、こんな時でも通常通り眠る地味子の姿があった
髪をそっと撫でれば、むず痒そうにふにゃっと彼女は笑っている




「来年は、出られるように頑張りましょうね…そして、ミスコンに出場する彼女を皆さんで応援しましょう」

「す、素敵だ…!」
「…もしも優勝したらご褒美に美味しい物を食べに行きましょうね。勿論担任の先生のおごりでね」

「おおお!!」
「マジかっ!!」




教室中が猛々しく威勢を上げる
皆、美味しい物に目がないようだ

だが、担任の先生は少しだけ顔を青ざめて、言い出した彼女を見やる




「えっ。そう言うのって優勝賞金からじゃ――」
「先生? 今年はちゃんと寄付しないと…もう庇ってあげられませんよ?」
「へっ…!?」



ますます青ざめる先生は、その言葉の意味を深く考えるのだった




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