HERO GIRL

□ミス才源とデートと尾行
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『今どこ?』

『駅前に居るよ。カフェの近く』

『はーい』




そんなやり取りをした自分のスマホを眺めて、蛍介は心臓が煩いほどにドキドキと緊張していた
彼女の連絡先を、最近になってこのスマホにいれた
これで二人の蛍介の連絡先を知る人が出来た…



「蛍介っ」
「わあっ!!」
「ど、どうしたの。ごめん、驚かせた?」




ううん、と首を振って彼女を――地味子を見る
私服の彼女を見るのは、二度目だと蛍介は思った




「待たせてごめんね」
「いいよ。僕も今来たとこだし――」
「あはっ。何かデートみたいだねっ」
「!!?」




そう、今日は地味子と蛍介のデートの日だった


勿論それは『ミスコン』で落札した蛍介のご褒美だった




「(いやいや、ご褒美って言うか――本当は四宮が来るはずだったのに!!)」




当の本人はお金まで出したにもかかわらず、蛍介に行くように言ってきた
勿論最初は断った だって意味が解らないから
でも、四宮は最後まで譲らなかった

僕だけが楽しんできても意味がないよね?
でも四宮は――頑なに断り続けた
それどころか、デートプランまで決める様に押し付けてきた

デートとか僕、したことないし!!
しかも、僕が楽しいなら四宮も嬉しいって何、どう言うこと――!?

結局何も決めてないまま、気付けば当日を迎えていた




「ど、何処に行く?」
「うーん。蛍介は行きたいところないの?」
「僕? えぇっと。特には――」
「あはは、なにそれー。ノープランデート?」
「(い、いやデートだなんて、僕が、地味子ちゃんと…!?)」




産まれて十数年、彼女はおろか、女友達だって僕にはろくに出来た事がなかった
それでも、今の身体はやせ細っていて、顔も整っているみたいで、僕が僕でないみたいだ




「とりあえず、ぶらぶら歩こっか!」
「う、うん!」
「手、繋ぐ?」
「えぇっ!?」
「嘘だよ。蛍介面白いねー!!」



遊ばれている気がしてならないと、彼女を見てそう思った




「『ドレコン』で一位に選ばれた感想は?」
「えっ。僕なんかが…いいのかなって」
「あははっ。そうだよね、選ばれた方って何が何だかわからないよね」
「そういう地味子ちゃんも『ミス才源』だよね」
「…人の価値って値段で決まるものなのかなぁ」




――物凄い遠い目をして、地味子はそう言っていた


この話はやめたほうがいいみたいだと、蛍介は思う




「えっと」
「あっ。見て見て、美味しそうなパフェ!」
「…ホントだ。食べる?」
「うん!!」




元気よく返事をした彼女に、蛍介はつられて笑顔になった


その様子をこっそりとつける影――



「け、け、蛍介とデートなんて…羨ましいぃいいい!」
「おい騒ぐなよ。見つかるだろ」
「地味子ちゃーーん!!」
「お前もうるせぇっ!!」
「流星も煩いよ?」




美怜、流星、道也、瑞希――この四人だった
休日の繁華街で珍しいこの組み合わせに、どうしてこうなったと流星は頭を悩ませる


美怜は、蛍介とデートする地味子が許せないから
道也は、地味子とデートをする蛍介が許せないから
瑞希は、蛍介と地味子のデートを邪魔するつもりはないが、何となく付き合って来た
流星は、そんな瑞希に付き合っている




「…ちっ。たかがデートだろ」
「たかが…だと? てめぇ、今なんつった」
「あぁ??」




聞こえてきた声に、流星は其方を向く
見ると――何故、此処にこいつらが?と思った




「バスコには重大なことなんだぞ…っ」
「…」
「何でそいつ泣いてるんだ、おい…」




建築学科のバスコと翔瑠がいた
電柱に身を隠しているけど、バスコ――お前一人でも十分隠れられてねぇからな!

この二人もまた、こっそり二人の様子を伺っていたのだ

瑞希と美怜がそれを見て困惑していた




「やだ。泣いてるー」
「顔は怖そうなのに、ちょっと可愛いかも…」
「(瑞希――!?)」




美怜はともかく、瑞希がそんな発言をするなんて、畜生、バスコめ――!




「お、お前らも二人を尾けてきたのかよっ!?」
「…お前は確か、地味子を一番最初に買おうとした奴」
「ひっ!! な、なんだよっ。怖くねーぞ!…ビビッてねーし!」




道也が震えつつも声を上げた

バスコがてめぇを見ただけで、俺の後ろに隠れやがった…
ビビるくらいなら話しかけんなよ…




「地味子は蛍介に買われた。だから、仕方がないんだ…っ」
「バスコ…!!」

「つーか、お前ら幼馴染だろ。あいつが知ったら傷付くんじゃねーの」
「…傷付く? 何故だ?」




何故って――自分の幼馴染がデートしているところをこっそり尾けるなんて、バレたら怒るだろう
そう言ってやれば、バスコはともかく翔瑠もまた腕を組んで首を傾げていた
こいつら仲良しか…っ




「あー、そういうものか?」
「いや、普通そうだろ…なぁ、瑞希?」
「あたしは流星について来られたら嫌かも。きっと相手の人殴ってそうだし」
「瑞希――!?」

「今まで地味子がデートってしたことないからな。解んねぇんだ」



――初デートが蛍介と言う事らしい




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