HERO GIRL

□私と彼女と同中と
1ページ/2ページ



『ミス才源』の栄光を手にしてから、人に話しかけられることが多くなった
正直言って――吃驚するだけだった




「おはよう!」
「えっ、おはよう――」
「名無しさんおはようー!」
「お、おはようございます…っ」




一夜にしてシンデレラガールなんて、とんでもない
ただ平穏に過ごしたいだけなのにどうしてこうなったのか

溜息交じりに教室に入れば、いつも通り美怜が出迎えてくれた



「地味子―! おっはよぉー!」
「ぶはっ…あ、朝から元気だね。美怜ちゃん…」




いきなり抱き着いてくるのはやめてほしい
心臓に悪いし、何より破壊力がありすぎる…!
同じ女なのにこの格差…恐ろしい子…!




「おはよう」
「えっ。おはよう…?」
「あれ、唯が話しかけてくるなんて珍しいじゃん」




うん、と地味子は頷いた
今まで彼女と話したことなんて片手で足りるほどだ
美怜や瑞希も仲がいいわけではないので、彼女としかグループを知らない地味子もそれは同じだった




「丁度学園祭の後だよね。唯が挨拶するようになったのって」




そうだ。自分がミスコンに出ると決まった時、睨んでいたのは紛れもなく彼女だった
それが手のひらを返したように、急に話しかけてきて――何だろうか




「うん。でも前から知ってたよ。あたしとこの子は同級生なんだ」

「「えっ!」」

「…って、なんで地味子まで驚いてるの?」




――いや、だって…




「…もしかして、あたしの事憶えてないの?」
「あ、あはは…」
「中学の時、同じクラスだったことも?」
「…も、もちろん憶えてるよぉ…?」




嘘、同じクラス? 中学時代? 友達なんて…自慢じゃないけど居なかったよ!
誰だ、この子って誰なの、唯ちゃん? え、ホントに誰?





「酷いなぁ、地味子ってば。あたしのこと忘れるなんて…っ」
「うう、なんかこの子怖い」
「唯と知り合いだったの? 全然そうは見えなかったけど!」




私も吃驚だよ…

改めて『唯』と言う人物を見つめる
とても綺麗な女の子だ、見たらきっと忘れないと思うんだけど…



うーん、うーん――


中学時代…

こんな可愛い子、いたら絶対忘れないと思う…




『――あたしとも付き合ってくれる?』




なんか――封印されし記憶が今、解放される気がする…




「地味子? 無理に思い出さなくても――」
「いや、なんか…此処まで出かかってるような」

「やめなよ。なんか顔色悪いよ?」
「でも――」
「うふふ…」




あれ、なんかこの笑い方、見覚えが――




「今でも筋トレしてるの? あの二人と」
「…思い出した。ビッチだ」

「「は?」」





美怜と唯は、揃って同じ事を言った





次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ