HERO GIRL

□私と同中と怖い人
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「パプリカ? 野菜?」
「違うよ〜。『パプリカTV』って言って、ネットを通じて動画を配信出来るの」
「へぇー。そんなのがあるんだ」
「地味子はそう言うのやったことないの? 最近じゃ皆、やってる人はやってるけど」




そうなんだと、地味子は美怜と唯を交互に見た
最近は唯が地味子たちに話しかけてくることが多く、本当に友達になったんだと地味子自身が驚いていた
連絡先は交換したものの、よろしく言ったような挨拶程度にしかなかった
まあ、メッセージ上で疎遠だからって、学校でもという訳でなくホッとする




「ううん、全然。SNSとかネットもあまり見ないし。テレビもそんなに」
「えっ。普段家で何してるの?」
「き、筋トレ…」
「…えっ!?」
「あははっ。地味子らしいよねぇ!」




あぁ、この反応久しぶりだと地味子は唯を見て思う
これがとある女子高生の日常なのだ
きっと普通の女子高生はテレビを見たり、雑誌を見たり、はたまた彼氏と遊んだりと、有意義な生活を送っているだろう

…あれ、筋トレも有意義だと思うけどな

結局は、人それぞれなのではないか…




「月風船のお蔭でいいお小遣い稼ぎになるの」
「なにそれ?」
「月風船一個当たり10円に換金出来るの。換金は1000個からなんだけど、其処から手数料として4割引かれちゃうのよね」
「へぇ…お金になるんだ」
「バイトよりも稼げるし、いいカモもいるの!」



…カモ?

って、バイトより稼げるって何、働かなくてもお金が入ってくるの?
何それ怖い




「皆、やってるの? 美怜ちゃんも唯ちゃんも」
「わ、私は――やってないけど…唯は配信してるのよね?」
「あ、知られちゃってるんだ。恥ずかしいなぁ…これでも結構上位なのっ」




っていうか、唯ちゃん人気者なんだ




「凄いなぁ」
「そんな事ないわよ?」
「唯ってば綺麗だから見てくれる人沢山じゃん!」
「え。自分を映してるの?」
「動画配信だもの」



そう言って、唯は自分のスマホで捜査をして地味子に見せてきた

画面にはにっこり笑う唯の姿があり、何か喋っている




「これがパプリカTVよ」
「え、唯ちゃんが喋ってる…え、凄い、なんか文字がいっぱい」
「見てくれている人がコメントをくれるの。あとは月風船もね」
「ホントだ。え、え、100個とか500個とか、凄いね」
「…すっごい、これがお金に?」



美怜も食い入るようにして、その動画を見つめていた
何処かショックを受けた様子の彼女に、唯は微笑を浮かべる



「美怜も可愛いんだから、月風船なんて簡単にもらえるよ」
「うーん…」
「ねぇねぇ。なんでこんな小さな画面に唯ちゃんがいるの。此処にちゃんといるのに」
「――それは、冗談か何か?」
「?」



少しずつ地味子や美怜と話すようになったけれど、未だに唯は地味子の事が理解出来ないでいた
中学時代からそうだ、幼馴染同様に変な子だった




「これは録画で、パプリカTVは基本生配信なの。リアルタイムね」
「へぇ…」
「地味子も出てみる?『ミス才源』だし、きっと月風船だって沢山貰えるわよ」
「ええー。いいよ…ネットとかSNSとか、ちょっと懲り懲りだし」
「地味子は『ミス才源』のSNSだけでもう嫌なんだって!」




美怜に比べ、唯は『地味子ちゃん』などの詳しい理由を知らない
それは興味がない、と言ったほうが正しくて――




「お金も沢山貰えるよ?」
「い、いや…バイトだけで十分だし」
「何のバイトしてるの? ガールズバー?」
「えっ!? いやいや、未成年だし…コンビニのバイトだよ」
「ふぅん…」




唯はそう言って地味子を見てきた
一体何を言い出すのかと驚きであるが、彼女は時折こうして会話の節々に変なことを言ってくる
それが冗談なのかよく解らなくて、地味子はいつも冷や汗を流していた




「人気が出たら『ベストBJ』になれるの。そうしたらもっとお金が稼げるわ」
「へ、へぇ…って、何で美怜ちゃんそんなに落ち込んでるの?」
「その『ベストBJ』が――唯なんだって」
「え…そうなの!?」
「別に隠してたわけじゃないけど…ふふっ、実はそうなの」




その『ベストBJ』がどれほど凄い物かは解らないが、自分のクラスにそんな凄そうな人がいるなんて驚きだ

地味子が羨望の眼で唯を見ていることに気付き、美怜は何だかムッとしていた




「あ、あたしだって…」




メラメラと燃えるライバル意識
地味子が唯に盗られてしまうのは嫌だと思った
どうにかして気を引きたい…蛍介の時以上に美怜は燃えていた

『ベストBJ』と『ミス才源』この二人を前にして、美怜はぐっと拳を握り締める




「…唯の真似をしたらいいのかな」
「美怜ちゃん、何か言った?」
「ううん、何にもっ」



早速帰ったらやらなきゃ――!!





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