HERO GIRL

□私と姉妹と理不尽な呼び出し
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――とある休日

今日も天気がいいと、照り付ける太陽に目を細めた
じりじりと焼け付くように暑いけれど、休む間もなく地味子は歩き続けていた

目的地と呼ばれる場所へ




「えぇと――こっち? それともあっち?」




スマホを片手に辺りを見渡す
この一帯は住宅地で、何処も似たような家が並んでいる
スマホのナビ通りに歩いているが、目的地までまだありそうだ
歩く度に、ゆらゆらとストラップが揺れる――翔瑠に言われて、やっとつけたものだ

どうしてこんなことになったんだろう――と、地味子は午前中に掛かってきた電話を思い出す





――PPPPP!



「あれ、電話だ…。!?」




珍しくスマホに着信が鳴り響く
其処に表示された名前は――『譲さん』だった


え、何で譲さん?
ホントに譲さんなの?

何の用?
っていうか、これって早く出なきゃ怒られるパターン??
うわ、何それ怖い

…動揺しつつもスマホを手に取る





「…も、もしもし?」
「遅い」
「すみません!?」
「まあいい…」




心臓はドキドキと強く脈打っていた
別に恋とかじゃないよ?
相手が譲さんだからだし!




「あのー、何か御用ですか?」
「今日は休みか」
「え。まあ…はい。日曜ですから」
「今から住所を言う。二時間後に来い」
「…は?」
「あぁ。この前みたいなヒラヒラした服で来るな。あと靴も履き慣れた物にしろ」




いきなり電話してきて、一体何のつもりだろうか
こちらの都合など一切無視だ
文句の一つでも言ってやろうと思ったが、本当に住所を口にし出したので慌ててメモに取る




「えぇと…此処に一体何が?」
「行けば解る」
「はぁ?」
「じゃあな」
「ちょ、まっ…!?」





譲さんは用件だけを言い残して電話を切った
一方的だった
意味が解らないと地味子はスマホを見つめて怪訝な顔をする

それになんだこの住所は
慌ててメモに取ったけれど、これで合ってると思いたい

だって譲さん、一度しか言わなかったんだもん!
おまけに早口だしさっ



「…っていうか、日の出台って蛍ちゃんが住んでるところじゃん」




一度だけ彼の家に行ったことがあったが、それきりだ
その地域にはあまり足を踏み入れた事がないので、迷子にならないことを祈ろう

最近はGPS機能も使える様になった
メモに取った住所を検索して、連れて行ってもらおう



…あれ、これって完全行く気だよね
何だか知らないけど、面倒だなぁ…


とりあえず、ヒラヒラした服を着るなと言われたので、適当に服を見繕ってスニーカーを履いた
その選択は正しかったようで、今は急勾配の上り坂を前に少しだけ驚いている




「こんな坂道、サンダルとかミュールで来たらヤバかったね」




譲さんはその事を見越して、あんなことを言ったのだろうか
だとしたら少しだけ感謝だ

ヒラヒラした服だったら登り難い事この上ない
しかし、凄い坂だな…と改めてそれを見上げる

何処まで続いているのか、小高い山の方まで続いている気がした
山道に入るのだろうか、そんなこと聞いてないよ?
っていうか本当に此処は何処なんだろう


譲さんに電話をしたかったが、目的地についていないことを言及されるのはごめんだった
小さく溜息を吐く

目的地までは、この坂を登ればもうすぐらしいけど…




「まあいいか」




ちょっとした『筋トレ』と思えば、こんな坂も余裕だった
伊達に地獄の筋トレって奴をしてないからね!




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