HERO GIRL

□私と後日談と日常
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「地味子、おはよー! 元気になったんだね!」
「おはよう美怜ちゃん。うん、もう回復したよ!」




登校途中に美怜ちゃんに会った
数日休んでいたので、友達に会えたのが感動の再会にも思えてきた
あ、やばい。本当に涙ぐんで来たかも




「動画見たよー。蛍介が格好良かったぁ!」
「美怜ちゃんは蛍介しか見ていないの?」
「勿論! でもさー。動画の所為で蛍介が有名になっちゃった…」




蛍介出演の『坂木神野事件 釈明動画』それにより、彼の人気はペースブックでは急上昇となった
再生数、いいね、コメントなど、たった一本の動画だけで何十万もの反響があった
そしてそれは、今も尚増え続けているらしい
美怜がおいおいと泣いているのを見て、地味子は苦笑する




「蛍介は格好いいんだからしょうがないよ」
「えっ。まさか地味子も蛍介を狙ってるんじゃないでしょうねっ!?」
「いやいや…」
「だよねー。地味子にはお髭の人がいるもんねっ」
「いやいや…」



…何で晃司?



「晃司とはただの幼馴染だよ?」
「其処から恋人同士になるって言うのも素敵じゃない?」
「恋人、ねぇ…」




そういうの、よく解らないんだよね
恋人って何。友達じゃ駄目なのかなぁ…




「その反応はよく解らないって言う感じね?」
「…美怜ちゃんもエスパーだったのか」
「まあねー♪ おっはよー!」




ふふんと鼻歌気分に美怜が教室のドアを開ける
彼女に続いて久しぶりの教室に入ろうとして――ぶつかった




「わぶっ!?」
「道也、あんた何やってるの?」
「いたた…道也?」




美怜越しに教室を覗き込む
其処には床に這い蹲って頭を下げている男――道也が居た



…何かいる。




「あ、おはよう。元気になったんだね」
「瑞希ちゃん、おはよう!」
「おはよー。ねぇねぇ…あれ、何?」




『あれ』を指さして、美怜が問いかける
すると、瑞希は苦笑いを浮かべながら教えてくれた




「地味子をずっと待ってたんだよ」
「え…」
「地味子ちゃんっ!!」
「うわっ。吃驚した…!」




急にガバッっと起き上がった道也に、ちょっと驚いて若干引いた




「もう身体は大丈夫なのか!?」
「あー、一晩寝たらすっかり良くなってたよ。み、道也は大丈夫?」
「全然大丈夫だぜ!」
「そ、そう…で。何でそんなことしてるの?」




あれ、デジャヴかな
半裸でないにしろ、あの時の同じように正座――もとい、土下座してるように見えるんだけど?




「…! そうだった!」




すると道也ははっとしたように、再び頭を深々と下げた
ゴンッって痛そうな音がしたと思うんだけど…
大丈夫かな、そんなゴリ押しで剥げてない?




「た、助けてくれて本当にありがとう!」
「…いや、助けたのは流星だから。私は何もしてないよ?」
「でも、迷惑かけたし、巻き込んじまった!」
「それは、まぁ…」




正直、私もあんなことになるとは思わなかった
ただ病院に行っただけなのに、まさか悪化して帰ってくるとは思わなかったんだ

結局晃司は私を抱えたまま家まで送ってくれて…あぁ、思い出すだけで顔から火が出る
道行く人にジロジロと見られて、しかも笑われたんだよ?

しかも何。微笑ましいわねって声が聞こえたんだけど――!?


あ。逆に腹が立ってきたな…なに、あの羞恥プレイ?




「…地味子ちゃん? やっぱ怒ってるんじゃ?」
「イイエ。オコッテマセンヨー」
「地味子、あんたロボットなの?」




酷いよ美怜ちゃん。私、一応人間!




「と、とにかく…! 猛烈に反省してんだ! 許してくれとは言わねぇけど…あ、やっぱ許してほしいっ。このとーり!」
「あー。だから土下座?」
「そ、そうだぜ!」
「おはよー…って、道也!?」
「きゃー! 蛍介、おはよう!」





蛍介も登校してきたみたいだ
うん、扉開けてこの光景を見たらそう思うよね、引くよね




「あ、地味子ちゃん。もう大丈夫なんだねっ。よかった!」
「蛍介、ありがとう」
「えぇと。それで、道也はどうしたのかな?」
「うーん…」




登校してくるクラスメイトの誰もがその姿を見ては、ひそひそと声が聞こえる
困ったな――なんか私がそうさせてるみたいで、恥ずかしいんだけど?




「道也、私は全然気にしてないんだけど――」
「本当に! すまなかった!」
「…おーい?」



駄目だ。聞く耳を持たないぞ
私に許してほしいんじゃなかったんだろうか

あれ、どうすればいいの。私?




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