HERO GIRL

□彼とお酒と信じてるの重さ
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寒さは日に日に増していった
早朝ともなれば、それは肌を刺すような痛みと言っても過言ではない
冷たい風のせいで、目には涙が浮かぶ

正直、物凄く寒い




「やぁっ!」
「まだまだっ」
「…元気過ぎんだろ」




まだ温かい缶コーヒーを手に、翔瑠は呟いた
自分の幼馴染二人の相変わらずさに、溜息を吐けばそれは白かった

毎朝こうして筋トレを行う二人の姿はもう見慣れていた
先日まで体調の悪かっ彼女も、すっかり元気になったようで――




「風邪を引くなんて鍛錬が足りないんだよね、きっと!」
「お前の場合、無自覚なんだろ」
「まだまだ鍛えが足りない証拠だねっ。もっとムキムキにならないと…っ」
「地味子、いつでも付き合う」
「さすが晃司!」




…あの二人の馬鹿さ加減にはついていけないと、翔瑠はまた小さく溜息を吐いた

そう言えば――今日も、あいつが居ない




「あいつが来なくなって二日か」




あいつとは――コンビニの蛍介だった
音は上げるし、直ぐにバテてしまいがちだけど、今日まで休むことなく頑張っていた

それが、ここ数日ぱったりと来なくなった――




「結構頑張ってたと思うけどな」
「はぁ…っ。晃司ってば容赦なさすぎー!」
「手を抜いたら怒るだろう」
「当たり前でーす!」




二人が戻ってきたので、それぞれにペットボトルを投げ渡してやる




「ありがとー!」
「ありがとう。翔瑠」
「おう。…あいつ、今日も来てねぇのか?」




それだけで地味子には通じたらしく、水を飲みながら『うん』と頷いた




「何か最近はバイトも休んでるみたいでさ。どうしたのかな、蛍ちゃん…」
「体調不良か?」
「んー。それも解んない。蛍ちゃんにメッセ入れても返ってこないしさ」
「それは心配だな」




晃司は心配そうな顔をしていた

本当に蛍ちゃん、どうしたんだろう…
今日、蛍介に聞いてみようかな


二人は一緒に住んでいることだし、何か知ってるよね




「さっきのあれ、何だ?」
「あぁ。晃司のパンチを私が避けてたの」
「見りゃわかるよ。お前…また早くなってねぇか?」
「えっ。何それ目に映らないほどの速さとか!?」




どういう訳か、地味子は目を輝かせている
素早さはバスコよりも自信があると、豪語するぐらいの奴だ




「やったー! 晃司より一歩リード!」
「何のだよ」
「力では負けない」
「お前も張り合うな、バスコ」




それでもバスコのパンチを避ける彼女に、翔瑠は少しだけ苦笑いする




「身体も暖まるし、翔瑠もやらない?」
「いやいい。それより学校だろ」
「え、もうそんな時間なの」




筋トレしていると、ついつい時間を忘れちゃうんだよね
一度帰って制服に着替えなくちゃ



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