HERO GIRL

□私とスカウトと地獄の原点改
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目の前には、大きなビルが建っていた
この前行った明里さんのお父さんの会社を思い出す
あの会社の様に厳かではなかったけれど、いろんな人が出入りしている姿を見る分には、何処の会社も同じようなものなのかもしれない

『PTJ』の顔とも言える有名な『DG』の巨大ポスターが、嫌でも目に入った
その下には、可愛い女の人の顔がいる
ただしそのポスターは、『DG』 に比べると普通のポスターだった

誰だろう――『アル』って読むのかな?




「凄いな地味子! ここに芸能人が沢山いるそうだ!」
「ほえー」
「ど、どどどどどうしよう…本当に来ちゃったよ。しかも地味子ちゃんまで…」




放課後、晃司に誘われてやって来たのは『PTJ』の芸能事務所だった
何でも彼が見学をしたいと言ったのがきっかけで、何故か私まで一緒に行く事になった

大丈夫なのかな
こう言うとこってセキュリティとかしっかりしてそう
明里さんとこも、パスがないとちゃんと入れなかったし…




「でも晃司。こう言うところって関係者以外立ち入り禁止だと思うよ」
「大丈夫だ。俺は蛍介のマネージャーだ」
「マネージャー?」
「あぁ。蛍介をワルから護る!」
「ほえー」




あれ、それなら私が部外者じゃない?




「地味子は少年のマネージャーだ」
「えっ、僕?」
「よーし。敏斗は私が護る!」
「えぇっ!?」
「でも先輩たちに目をつけられたりしちゃうと困るから、あまり目立たないでね」

「「解った!!」」




おっと。早くも注目されてしまいそうだ
目立つのは私も困るな、怒られるの嫌だし




「私は『DG』って人のサイン貰えればいいかな。美怜ちゃんと瑞希ちゃんと唯ちゃんに頼まれちゃって…」
「そ、そうなんだ。彼が中に居るかは解らないけどね」




一応サイン色紙は来る途中で買って来たので、準備はしてきているつもりだ
私が『PTJ』 に見学に行くと言ったら、彼女達に頼まれたのだ

顔は…まあ、あんなに大きく出ているから、忘れることはないと思う




「ところで敏斗」
「なに?」




先程から気になる事があったので、じっと彼の顔を見つめる
すると、バツが悪くなったよう敏斗は目を逸らしていた




「あ、あの、近いよ…名無しさん」
「地味子だってば」
「えっと、地味子ちゃん…」
「敏斗、ピアス開けたの? 前に見た時はそれなかったよね」
「あ、うん…ちょっとね」




言いにくそうに、敏斗は目を伏せた
左耳には幾つも絆創膏があった
開けたのなら、ピアスでもなんでもしてそれを見せてやるのが普通だ

でも敏斗のは…それとは違う気がして
むしろ隠そうとして貼っているような気がした




「やっぱり。芸能人になるとお洒落にも気を使うんだねっ」
「えっ…芸能人?」
「…地味子ちゃんは、僕や君をもう芸能人と思ってるんだ」
「あ、そうなんだ…」
「敏斗、頑張ってね!」
「う、うん。ありがとう」




少しだけ、敏斗の顔に笑顔が戻ってホッとする




「もし困ったことがあったら、すぐに連絡してね。私、飛んでいくから」

「えっと、連絡先知らないけど?」
「あぁ、そうだっけ。じゃあ、交換しましょ」
「えっ!?」




敏斗は物凄く驚いているようだった
自分で言っておいてなんだけど、確かに連絡先、私も知らないんだよね

この機会に敏斗と連絡先を交換しなきゃ!




「よーし。連絡先ゲット!」
「お、女の子がそんなあっさり…」
「わーい、友達増えた!」
「不思議な子だなぁ」
「少年。俺とも交換してくれ」
「き、君も!?」




早く中に入りたいんだけどなぁ…


さっき目立たないでと注意したにも関わらず、もういろんな人の眼がこっちを見ている気がすると、蛍介は溜息を吐いた

ただでさえ自分は目を付けられているのに――


とくに、この会社には『怖い人』達がいっぱいだ
芸能事務所ともなると、そう言った人達とも繋がりがあるんだろうか

有名な人ともなると、SPだって付くぐらいだし――


それに、事務所内も広いから僕でさえもまだ迷うんだよね

だから、しっかり着いて来てもらわないと…




「蛍介。トイレに行きたいです」



トイレはあっちだよ、地味子ちゃん





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