HERO GIRL

□彼と鍛錬とダイエット
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「…今、なんて言ったよ。バスコ?」
「今日から運動量を増やす事にした! ランニング20キロ! 腕立て、腹筋、スクワット200回だ!」
「二倍になってんじゃねーか!!」




早朝から、翔瑠の悲痛な叫びが木霊した
駄目だよ。私達みたいに起きている人ばかりじゃないんだから




「に、二倍…!?」
「そうだ蛍介」
「ぼ、僕。付いて行けるのかな…」
「大丈夫だ。お前はよくやっている」
「不安しかねーぞ、こいつ」




よく見たら、蛍ちゃんはガクブルだった
運動量増えてやったーって喜ぶところじゃないのかな




「大体何でそんな事になったんだよ?」
「あの人の会ったからだ」
「あの人?」
「淳助さんだよ。憶えてない? 中学の時に乗り込んで来た…」
「…あー、あの時の」




どうやら憶えているようだ
出会いが衝撃的だったし、無理もないと思う




「それに、グラサン男もいた」
「あれれ。晃司は譲さんとも知り合いなんだ」
「あぁ」
「なるほどねぇ…それでもっと強くなりたいってか」
「そうだ」




事の経緯を全て説明したわけでもないのに、翔瑠はとても理解が早かった
やがて肩を竦めて困ったように蛍ちゃんを見て笑う




「お前、頑張れよ」
「うう…」
「蛍ちゃん頑張ろうっ。私も頑張る!」




本当に蛍ちゃんは辛そうだったけれど、これも強くなる為、変わる為だ
それに私も練習量を二倍にしたら、今度こそムキムキになれるかもしれないし――




「地味子は無理しない程度にやれよ」
「大丈夫! ムキムキになる為に頑張ります!」
「いや、誰もそこまで求めてないぜ? なあ、バスコ」
「…」
「どうした?」
「いや――どうしてだろうなと思っていた」




晃司が疑問を持った顔で腕を組んでいた
どうしてって――私がムキムキになれない理由かな?
皆と同じように鍛錬を積んでいる筈なんだけどねぇ…




「もう三カ月だ。何か変化があってもいい筈。なのに蛍介は、何故痩せないのだろう――」
「あ、そっち?」
「何だと思ったんだよ…まあ確かにな」
「え、えっと…?」




全員の視線が蛍ちゃんに集まっていた
当の本人はどうしていいのか解らずに、狼狽えている

運動を初めて早三ヶ月
その間に彼は徐々に距離を伸ばし、回数を増やしてきた
晃司の言う通り、練習量も二倍になっているのに――蛍ちゃんの身体は最初と全く変わっていないように見える

もしかしたら服を着ているから、脱いだら何処か変化しているのかもしれないけど…




「何も変わっていない」
「うん。蛍ちゃんのままだ」
「ぼ、僕のままって何かな、地味子ちゃん」
「うーんと…可愛いね?」
「無理に言葉を選ばなくていいよ――太ってるって言いたいんだよね」
「ぴゅーぴゅー」
「口笛出来ないだろお前…」




晃司は本当に悩んでいた
このまま変わらないようでは、いくら運動しても意味がない




「蛍介、安心しろ」
「うん?」
「俺が必ず原因を明らかにして見せる」
「う、うん」
「だから――今日はお前についていようと思う」
「…うん?」



痩せない原因は何か?


その原因究明が今、始まった――!





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