HERO GIRL

□私と友達と不治の病
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「うーん…」
「どうしたの? そんなに難しい顔して」
「瑞希ちゃん。実は私、不治の病みたいなんだよね」
「えっ」




ある日の学校にて
ふとした悩みを相談すれば、瑞希ちゃんは目を丸くして驚いていた




「不治の病って…何それ、嘘でしょ?」
「残念ながら本当なんだ。病院にも行ったけれど、よく解らないし」
「解らない? 自分の病気なのに?」
「うん。原因不明なの」
「そ、そんな…!」




瑞希ちゃんはとてもショックを受けているみたいだった
まるで自分が死の宣告されたみたいだよ




「地味子がそんな病に罹っていたなんて…! 今まで隠していたの?」
「隠していたって言うか、気付いたのは最近と言うか――」
「えぇっ!?」
「朝から何騒いでんだよ瑞希」
「流星…っ!!」
「…な、なんでそんな顔してんだ??」




今にも泣きそうな彼女の顔を見せられたら、きっと私でも心配してしまうと思う
あぁ、余計な事を言って心配かけてしまっただろうか




「地味子が、地味子が…っ」
「おい。どうしたんだよ?」
「大したことないよ、ホント。ねっ」
「大したことあるわよっ! 馬鹿!」
「おっふ…何かすみません」




朝から友人に怒られてしまった
でも本当に原因不明なんだよね




「おっはよー!」
「おはよう、皆」




其処へ美怜ちゃんと蛍介が登校してきた
二人は一緒に登校してきたらしく、教室に入るなり美怜ちゃんがスマホを見せてきた
其処には小さな雪だるまが二つ、寄り添うように並んでいる

丁寧に目や鼻、口のパーツがつけられ、手編みのマフラーまでもが巻かれていた




「見て見て! 朝来るときに小さな雪だるまを撮ったの!」
「わぁ。可愛いね!」
「でしょっ。あれ、瑞希はどうしてそんな顔をしているの? 大丈夫」

「だ、大丈夫じゃないわ…」
「瑞希ちゃんどうしたの?」




蛍介もまた、不安そうに瑞希ちゃんに聞いた
彼女はふと此方を見たのだが、開きかけた口をキュッと結び、首を横に振る
やがて浮かんだ笑顔は、今にも泣きそうだった




「ううん。何でもないの…」
「でも――」
「おい瑞希?」
「ごめんね。気にしないで。あ、私にも雪だるま見せてよっ」
「う、うん」




…咎めるような流星の視線を感じる

やっぱり余計な事を言うんじゃなかったな、ホント




「本当に可愛いねっ!」
「でしょっ。そうだ、お髭の人にも送ろう。あの人、可愛い物とか好きそうだし」




――あ、まただ…

胸の奥が、なんか変




「バスコが? 信じられねぇ」
「でもバスコって犬が好きだし…」
「そう言えばあの人、わんちゃんの写真で喜んでいたよね」
「そういやそうだったな」
「送信完了!」




どうやら美怜ちゃんは本当に写真を晃司に送ったようだ
あの雪だるまは本当に可愛いと思ったし、きっと晃司も喜ぶと思う

晃司が喜んだら、私も嬉しいんだけど、さ…




「美怜ちゃん、バスコと仲がいいんだね」

「お髭の人、面白いんだよーっ。最近は自分から話題を振るようになったし」

「へぇ。そうなんだ」
「お前、あいつと話したりするのか?」
「電話したり、コンビニに来たりもするよ。この前は夜遅いからって送って貰ったの」




…どうにも、素直に喜べない自分が居る

心に棲むモヤモヤが――不治の病が、また再発したみたいだ




「お前以外の女と話もするんだな、あいつ…おい?」
「ん?」
「どうした。ぼーっとしてたのか」
「あぁ、うん。そうみたい」
「は? 大丈夫かお前」




――キーンコーンカーンコーン…


「あ、チャイム」
「一限目何だっけ」
「朝から体育とか憂鬱よねー」




チャイムが鳴ると、皆は自主的に席に着いていく




「地味子…」




そんな中、最後まで瑞希ちゃんが残り、とても心配そうに此方を見ていた
ごめんね瑞希ちゃん、そんな顔をさせたい訳じゃないんだ

だから、少しでも安心させようと笑って見せた




「瑞希ちゃん、やっぱり不治の病だよ。モヤモヤが収まらない」
「…モヤモヤ? それはどういう時に起こるの?」
「えーっとね…私にもよく解らないんだけど、今みたいに美怜ちゃんを見ていたりすると感じるよ。…女の子が好きなのかな、私」




いや、美怜ちゃんは好きなんだけどね。友達としてね!




「今みたいに…? そう言えば前に、美怜は彼と連絡先交換してたわよね」
「うん。その時からだよ、二人が仲良くなったの」
「それを嫌だとか、思ったりは…?」
「え…何で私がそう思うの?」
「…」
「瑞希ちゃん?」




暫しの沈黙
それから彼女は何かを考え込んでしまった

もしかして、病の原因が解ったのかな?
いや、そんな訳ないか――




「運動したら解消されるかな。あ、でも運動したら悪化するかも? うーん…」
「…えぇと。大丈夫だと思うわ」
「そ、そう?」
「えぇ。寧ろ存分に動き回っていいのよ」
「…瑞希ちゃん。何か怒ってる?」
「いいえ? 寧ろ安心したわ」




…何を安心したのだろうか

とにかく彼女の顔が笑っていたので良しとしよう



よっし、気合入れて体育頑張るぞー!!





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