HERO GIRL

□私と集金と4大クルー
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いつもの様に、筋トレで汗を流して家に帰る
今日は学校も休みで、特に出かける予定もないので家でのんびりすることにしよう――



――PPPP!



そう思ったところで、机の上に置いたスマホがけたたましく鳴り響いた
電話による着信だと気づき、画面を見ると――

…思わず怪訝な顔をしてしまった



「…淳助さん?」



それは確かに淳助さんからの着信だった
休日の、しかも朝っぱらから一体何の用だろうか

譲さんよろしく、嫌な予感しかしない…

このまま無視を決め込んでもいいのだが、着信は鳴りやまない
留守番電話サービスにすら繋がれないってどういう事?

仕方がないので恐る恐る電話に出る



「も、もしもし…」

『俺だけど―!』

「…俺さんに知り合いはいませんが」

『あ? 何か言った?』

「何の御用ですか、淳助さん」



ホント、何の用なんだろうか



『あと三十分ぐらいでそっちに着くから』

「…はい?」

『お前学校休みだろ? 遊んでやるよ』

「いや、結構です…淳助さん忙しいでしょ」

『そ。この俺が糞忙しい中、時間を作ってやるんだぜ? いいから来いよ』



横暴だ

…譲さんといい、淳助さんも俺様な人なのだろうか




「でも私、今筋トレから帰って来たばかりで…服とかも選ばなきゃだし」



と言うかまず、シャワーを浴びさせてくれ
服を選ぶのはお母さんに任せるとして…三十分はホント短すぎると思います!



「服? 今回はジャージでいいってよ」
「は?」
「じゃーな。ちゃんと準備しとけよー」
「ちょっ…! …切れた」



通話の切れた画面を見て、呆然とする
一日の始まりが何とも言えない気分だった

それに、今回はって…?





「あら。何処かに行くの?」
「うん…」
「その割には浮かない顔ね」
「出来る事なら行きたくないんだよねぇ…」



溜息交じりにそう告げると、お母さんは首を傾げた



「嫌な事は嫌ってはっきり言わないと」
「言えるものならね」
「悪いお友達と付き合ってるの?」
「まさか。私の友達は皆、いい人だよっ」



そう、一部を除いて――だけど
私と淳助さんは、別に友達って言う間柄じゃないと思う

元はと言えば、中学のあの事件で知り合ったのがきっかけだったし、つい最近再会を果たしたようなものだ
同じ意味では彫り師のお兄さんも例に挙げられるけれど、あの人と私はマブの付くほど仲がいいダチだと思う
この前ご飯も一緒に行ったし、会う頻度は限りなくお兄さんの方が高い



「ジャージで行くの?」
「うん。淳助さんがそうしろって」
「…淳助さん?」



――ピンポーン



突然鳴り出すチャイム

日曜日だよ
まだ朝の子供番組すら始まっていない時間帯だよ



「誰かしら、こんな朝早くに」
「…おっふ。もう迎えに来たのかな」




まさかね、と苦笑いを浮かべつつ、母よりも先に玄関に出る
恐る恐るドアスコープを覗けば、やはり淳助さんが居た



「…マジか」
「開けろよ。居るんだろー?」



気配で解るんだろうか、ほんと淳助さんって怖いよ
意を決して扉を開ける



「よーっす」
「三十分後って言ったじゃないですか」
「あ? もう経っただろ」
「十分も経ってませんよ…」
「でも準備ちゃんと出来てんじゃん。偉い偉い」



そりゃ筋トレ帰りですからね?
シャワーを浴びる暇もなかったですよ!?

だから、あんまりジロジロ見ないでほしいですね!




「けど色気がねーから、やっぱ下はスカート履いて来いよ」
「色気? そんなもの皆無ですけど」
「女子高生の台詞とは思えねぇな、おい」



ジャージで来いと言ったり、スカートを履けと言ったり、どうしてそこまで指定されなきゃいけないんだろうか

非常に困った
でも淳助さんに逆らうのも面倒だし…



「あら…お友達にしては随分と年上の人みたいね」
「お母さん! えっと、この人は…!」
「初めましてー。旦那さんには昔、お世話になってました。淳助っす」



お母さんの登場でほっとしたのも束の間、淳助さんがいつものノリで挨拶をした
お父さんは淳助さんを知っているけれど、お母さんとは初対面なんだっけ




「淳助くん…あぁ、貴方が」
「え。お母さん知ってるの?」
「あの人が以前よく話してたわよ、貴方の事」
「マジっすか。どんなこと話してんだろあの人―」



私の知らない所で、父と母に淳助さんの事を話していたみたいだ
彼の風貌を見ても委縮したりしないのは、その所為かもしれないし、母の肝っ玉のデカさが相当して…



「地味子? 貴女は着替えてきなさい。部屋に用意してあるから」
「うぃ。行ってきまーす」

「ちゃんとヒラヒラの奴、選んでくれました?」
「確かにヒラヒラだけども、貴方の為に選んだ訳じゃないわよ?」

「ぶはっ! 奥さん気ぃ強いっすねー! そう言う女性は嫌いじゃないっす、俺!」




玄関でそんな会話が繰り広げられる中、私は自分の部屋に戻る
其処には確かにヒラヒラのスカートが置いてあった


お母さん、さっきの今でホントに用意がいいですね
会話を聞いていたんだろうか




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