HERO GIRL

□私と写真と思い出
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『――データに空きがありません』


「…おや。もういっぱいだ」




今日までたくさん写真をこのスマホに収めてきたが、それももう限界に近いようだ
突然の通知に、スマホが悲鳴を上げているのだと気づく
中学の時は三年間で半分も行かなかったそのデータ容量が、高校二年になった今、早くも整理しなければならないらしい

忘れない内に、不要な物は削除するとしよう――




「…これは撮影ミス、これも、これも、あっ。これもだ」




私はどれだけカメラマンとしての素質がないんだろうか?
あれだけ一杯になっていた容量のほぼ半数が、ピントのずれや手ぶれによる、いわゆる仕損じた写真ばかりだった

大切な写真は保護をかけて消さないようにしているから、誤って消す心配はないし、本当に気に入ったものはプリントしているから抜かりはない

一気にスマホの空きが増えたのは嬉しいのだが、よくもまあこんなに写真を撮ったなと自分でも驚く




「…昔は、写真を撮る人だって限られてたのにね」



写真を整理していたら、懐かしい物を見つけた
中学時代の写真だった

私と晃司と翔瑠
今よりも幼く、今よりも小さな私達
何処が変わったかって言うと、色々と変わったよね――



「地味子、何見てんのー?」
「…っ!?」



突然真横から顔が出てきたら、そりゃ誰でも驚くと思うよ?
今でも心臓がバクバク言ってるし、死んじゃうかと思った!
危うくスマホが落ちるところである



「み、美怜ちゃんか。吃驚したー」
「あははっ。地味子ってば面白い顔してるー!」
「笑い事じゃないよ、もう」
「ね。何見てたの? 写真?」




うん、と今見ていた三人の写真を美怜ちゃんに見せる
すると、彼女の顔が見る見るうちに驚きの表情に変わっていった

え、なんで?



「えっ。これって…もしかして」
「私と晃司と翔瑠だよ」
「これがお髭の人!? 嘘、信じられない! あと地味子が全然違う!」



美怜ちゃんが驚くほど、その効果は絶大だった
確かに今と比べるとその差は一目瞭然である



「地味子は高校デビューだったのね!」
「中身は全然変わらないけどねー」
「それにお髭の人は髭がないし、ムキムキじゃないし、なんかひょろいし、あと可愛い!」
「そこまで?」



其処へ騒ぎを聞きつけた流星が覗きに来た



「へっ。ひょろっひょろじゃねぇか。俺でも勝てるぜ」
「中学生相手に戦うの? 馬鹿なの?」
「こうして見ると、今と全然違うね。翔瑠もだけどさ」
「どいつもこいつも高校デビューかよ」



そう言って流星は嘲笑っていたが…



「流星だってそうでしょ?」
「えっ」
「今と比べたら全然違うじゃない」



そう言って瑞希ちゃんは自分のスマホを取り出した



「確か…あった!」



カコカコと操作する音が聞こえたかと思えば、見せてくれたのは同じく三人で映っている写真である
ただし、其処には知らない人の姿もあった



「何でそんなの持ってんだよ!?」
「三人で撮ったの忘れたの?」
「わ、忘れてねーけど…」
「…流星が突っ張ってない、だと」
「あははっ。これが流星? 可愛い!」



写真には一目で瑞希ちゃんだと解る女の子を挟んで、両隣に男の子が居た
一人は流星なのだと目つきで解ったけれど、もう一人は――何処かで見たことがあるような気がする



「み、見るんじゃねぇよっ!」
「流星も高校デビューで突っ張り出したの? 髪がサラサラでお坊ちゃんみたいだね」
「きっと、この頃から内面は突っ張っていたのよ」
「うるせー! お前らぶん殴るぞ!」



顔を赤くして、プルプルしている流星
あまり言いすぎると泣いてしまいそうになるから、程々にしておこうか



「お? 誰だこれ」
「流星だよ。中学の頃の」
「ばっ…!」
「…お前って高校デビューだったんだな」
「お前もぶん殴る!」



道也も驚くほどの変わり様だと言う事だ
今にも殴り掛からんとする流星に、道也はマジで怯えきっていた

それにしても――と、流星の目を盗んで再びスマホに眼を落とす
もう一人の男の子は、少し幼いけれどやはり見た様な顔だ

コンビニに来ていたあの男の子に似ている



「その子ね。私と流星の友達なの」
「え?」
「もう、ずっと会ってないんだけどね…」
「瑞希ちゃん…?」



そう言った彼女の表情は、悲しそうに見えた気がした




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