HERO GIRL

□超絶美人と私と…くまさん?
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久し振りに、家族揃っての朝食
小鉢には、ちょっとした私の――自信作!

昨晩作っておいたそれを、こっそりお母さんの前に置いてみた
あ、ついでにお父さんの分もね




「あら…いつの間に煮物なんて、作れるようになったの?」
「ふっふっふ。私もやれば出来るんだ!」



鼻高々に自分の作った煮物を口にする
以前は消し炭と化していたそれは、蛍ちゃんのお母さんのアドバイスのお蔭で、それはもう格段に上達した

自分で自分を褒めてあげたいくらいだ
いや、もう褒めてるけど!



「地味子凄いっ。この煮物はとっても美味しいよ!」
「本当ね。お父さん、今日の朝食は地味子が手伝ってくれたのよ」

「あぁ、なるほど。だから卵焼きはダークマターなんだね」
「ダークマター言うな。間違ってないけどさっ」



食卓の上には、白米やみそ汁、卵焼き、焼き魚など、日本の和食を象徴するものが並べられている
少なくとも、お母さんが作ったものではない事は断言出来た
それは私がとてもよく知っている事…失敗作のオンパレードである



「卵焼きより先に、煮物がちゃんと出来るって、どう言う事かしらね」
「あ、あはは…火力MAXはしてなかったはずだけどな」

「しかもこれ、いい味出してるわね。ちゃんと中まで染み込んでる」
「そうでしょうそうでしょう!」



珍しくお母さんが褒めてくれた!
さっきからもう鼻高々だ

全ては蛍ちゃんのお母さんのお蔭だった
うちのお母さんの口にも合っているようで、何よりである



「お母さんでもこんな味出ないわ。凄く美味しい」
「そうでしょうそうでしょう!」
「だからこれ、うちの味じゃないわね。誰に教えてもらったの?」
「えっと…」



口に合いすぎて、逆に怪しまれてしまった
流石お母さん、娘の事をよく解っている

其処のお父さんみたいに、美味しいを連呼して食べてくれれば、それでいいのにね



「正直に言いなさい?」
「お母さんが怖い…」



まぁ、別に隠す事でもないし、いいか――…


煮物上出来の経緯を話すと、お母さんは何故か肩を落としていた



「他所様に習ったの?」
「他所様っていうか、蛍ちゃんのお母さん…」
「お母さんは知らないのよ。どうしましょう、迷惑かけなかった?」
「だ、大丈夫なはず…」



おばさんの身体が、出来の悪い煮物に侵されていなければ…だけど



「今度お礼をしなきゃ。近くに住んでいるの?」
「えーっと、おばさんはもう家に帰ってて…ずっと西の方だったかな」
「まぁっ。すぐに行けないじゃない」



何で私は怒られてるんだろうか…
煮物が上達して凄いねって、褒められる休日の朝の筈だったのにさ



「しかも貴女の失敗作を食べてもらったですって? あぁ…お見舞いの菓子折りも持って行かないと…!」

「あははっ。私と同じこと考えてる。やっぱり親子だねっ」
「笑い事じゃないわよっ」




敗作って…お母さん、私の料理を何だと思ってるのかな

そしでお父さん、さっきから苦しそうだけどどうしたの




「あいたたた…! お父さん急にお腹が痛くなったよっ。卵焼き…ダークマターの所為かなぁあああ」

「何故言い直したし」
「あら、胃薬切らしてるんだったわ。残念だけどそのまま頑張って頂戴」
「お母さーんっ!?」



のんびりお茶を啜っているお母さんは、悪びれもなくそう言った



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