HERO GIRL

□地味子ちゃんと偽地味子ちゃん
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バイト終わりに筋トレするのが、もう日課になっていた
今でも運動は苦手だけど、こんな僕に付き合ってくれてるあの三人には、本当に感謝だ



「おらおらおらぁっ!」
「まだまだだぞ、地味子っ!」
「くぅうう…!」
「いや、俺からしたら十分凄いけどな?」



ランニングの小休憩に水を飲んでいたら、いつも通り二人の組み手が始まった
殆ど彼女の攻撃が主体なんだけど、その気迫が凄まじい

あのラッシュ――まるでゲームの世界みたいだよね
それを難なく受けきるバスコもまた、凄いんだけど…



「地味子ちゃんどうしたの。新しいジャージを買って、気合入ってる?」

「いや、ダイエット!」
「ダイエット?」
「油断したら太るから!」
「お前、そんなに太ってねぇだろ」



翔瑠の言う通りだと思う
僕からしたら、本当に細いよ彼女は



「昨日は牛丼食べすぎちゃったもん!」
「そりゃ、あれだけ食えばな」
「ううう…今日から頑張る!」
「む、無理しないでね」
「ありがとう、蛍ちゃん!」



キラキラした笑顔が、僕には眩しすぎた
頑張るのはいいけれど、最近は熱中症になりやすいから、本当に気をつけた方がいいと思う



「地味子、少し休憩しよう」
「ええー。私はまだ行けるよ?」
「…じゃあ、俺が疲れた」

「晃司はガッツが足りないなぁ。仕方がない、休憩にしてあげよう」

「助かる」



…バスコがうまく誘導しているみたいだから、大丈夫そうだね

ベンチに戻って来た三人に、タオルと水のボトルを手渡した
この暑さでちょっと温くなっているけれど、冷たすぎるよりは身体にいいって、バスコが言ってた




「はー。今日からまた学校か」
「何だよ急に?」



突然、地味子ちゃんが深々と溜息を吐いた



「いや…三連休もあっという間だったなぁって」
「解る、休み明けは辛いよな」
「俺は皆に会えるから嬉しいぞ?」
「バスコ…!」



君って本当にいい人だよね、バスコ
翔瑠も号泣してるし、地味子ちゃんは――あ、まだ肩を落としてるよ



「私は勉強が嫌いだから、行きたくない…」
「お前、この前の試験どうだった?」
「聞きたい? 殆ど赤点ですよ…」
「こりゃ補習だな、また」



先日行われた中間試験
その解答が帰って来たのが、連休前の事だった

僕はと言うと、以前の教訓を生かして、試験中は早々に問題を解き、残り時間で体を入れ替えて、次の試験の予習をしていた

これならカンニングにならないと、過去の失敗は繰り返さないつもりだ

お蔭で時間内に問題は解けて、いい点も取れたんだけど…そう言えば、珍しく明里ちゃんが試験で慌てていたっけ

学年二位なのに、時間が足りなかったのかな?



「補習を受ける日は、バイトを休まないと…店長に迷惑をかけるなぁ」

「一応、学業優先だもんね。あ、それなら僕が早めに出ようか?」

「え、いいよー。蛍ちゃんにも迷惑かけちゃうよ」

「それくらい構わないよ」



地味子ちゃんは相当迷っていたけれど、結局は僕が早くバイトに出る事に定まった
補習って確か、放課後の二日間だったかな
店長には後で連絡するそうだ




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