HERO GIRLA

□幼馴染と喧嘩と恋する乙女
1ページ/5ページ





「地味子ちゃん、バスコと別れたってホントか!?」
「別れてない!」
「でも、噂になって…」
「喧嘩してるだけ!」
「痛い!」



朝から見たくもない人の顔と、聞きたくない言葉が舞い込んで来たので、思わず正拳突きを食らわしてしまった

ごめん、道也
でも私は今、虫の居所が物凄く悪いんだ

昨日の今日で、早くもクラス中に――いや、学校中に広まっているみたいだ
私も晃司も、色んな意味で有名人だからかな



「喧嘩? やっぱり女の取り合いか?」
「えっ。私はバスコが浮気したって聞いたけど」
「別れ話になったから、地味子がバスコをボコボコにしたんだろ?」



それにしても、噂は尾ひれを付いて回っている
歪曲された様々な噂で、どれが真実かなんて、他の人は知らない

知っているのは、私達だけだ



「全く。いつの間に噂になってるし…何処から情報が漏れたのかな」

「ちょっとお髭の人! 地味子と喧嘩って何っ。他の女とデートなんて最低!」

「まあ、多分あれが原因の一つだろうな」
「美怜ちゃん…」



クラス中に広まっているのは、彼女が大きな声で誰かと電話をしている所為でもあるようだ
怒気を含んだその声は、トーンを落としてはくれない



「えっ、海よりも深い理由? そんなのただの言い訳じゃん!」
「な、何してるの。美怜ちゃん」
「あっ、地味子! …ちょっと、お髭の人!? もうっ、勝手に切って――くううううっ!!」



怒り任せに机がダンッと力強く殴っているが、其処は私の席なんだよkね



「あのー、美怜ちゃん」
「くううううっ!!」
「近寄れないし、座れない…」
「バスコ。デートって本当だったんだ。流星の言う通りね」



そう言ったのは、瑞希ちゃんだった



「二人とも晃司の事知ってたの?」
「まあね、こんなことになるとは思わなかったけど」
「お前、追いかけたのかよ? よくやるぜ」
「だって、知らなかったんだもん。皆も知ってたんだね」
「それで怒ってるの?」



やはり、傍から見たらそうなるのだろうか
昨日から、私のイライラは止まらなかった

何に対しての怒りなのかも、自分じゃよく解っていない



「怒る? 私、怒ってないよー?」
「…お前のその笑顔、怖ぇよ。女と会ってた事が、そんなにショックだったのか?」
「解んない」
「はぁ?」
「それを今勉強中なの! 美怜ちゃん、どうしても卒業式に告白されないんだけど…」
「えー。またぁ? ちゃんと好感度上げてる? パラメーターも大事よ」



ゲームについて攻略方が解らない時は、美怜先生に頼むことにしている
昨夜もメッセでいろいろ聞いたけれど、結局誰一人として主人公に告白してくれる人は居なかった



「好感度はずっと激おこのマークだけど」
「それって危険な状態!」

「パラメーターはオールMAXだから、試験はパーフェクト。卒業後の進路は選び放題だった」
「何それ凄い」




休日はずっとパラメーターを上げていたと言ったら、何故か怒られた



「どうしてそうなるの? デートは!?」
「たまにデートはするんだけど、選択肢がいつも駄目みたいで悪印象になるの」
「奇跡過ぎ!」
「地味子にも原因があるんじゃねーの」



私は何も言い返せないでいた
ゲームもリアルも前途多難のようだ



「地味子はよっぽどバスコの事が好きなのね」
「好きじゃないよ、瑞希ちゃん?」
「嘘ばっかり。怒ってるじゃん」
「うっ…」
「まぁ、確かに浮気されたら怒るよな」
「浮気じゃないってば」



流星も瑞希ちゃんも何を言うんだろうか
本当に二人は仲良しだよね

私は怒ってないし、彼女じゃないから、あれは浮気じゃないもん



「だって彼女じゃないし」
「いや、彼女だろ」
「彼女でしょーが!」




瑞希ちゃんだけでなく、流星は美怜ちゃんとも仲良しなのかな



「俺だって瑞希が他の男とデートしたら、そいつをぶん殴ってやりてぇし」

「やめてよ流星。ただの迷惑」

「うぐっ…」

「仮にそうなったとしても――誰と付き合おうと、流星には関係ないでしょ」

「瑞希ぃ」



あらら。こっちの幼馴染もちょっと前途多難かな



「そう言えば、今日はお髭の人に会った?」
「会ったよ。筋トレの時に、ボコボコにしてやった」
「そ、そう」
「(バスコ、物凄く上の空だったよね…)」




次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ