HERO GIRLA

□僕と友達と飛ばし通帳
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朝、通学途中に何気なしに見た電柱に首を傾げる
よく見ると、行く先々にそれは貼ってあった
まるで私の行く道を知っているかのように



「『通帳買います』…?」



世の中には、色んなものを買いたがる人もいるんだなぁ
そんな事を思いながら、少し早足になって学校へと急いだ

ワルを倒して、森永を助けていたのは毎度の事だった――



「前に皆で撮った写真、現像してきたんだけど。良かったら貰ってくれる?」
「いいの?」
「勿論よ!」



私の家で誕生日パーティーをした時に、お父さんが写真を撮ってくれた
皆で映る写真で私は、どうやらちゃんと笑えてたらしいと、それを見てよく解る


「良く撮れてんな」
「ホントね」
「お父さん、無駄にカメラスキルが凄いから」
「確かに…」



伊達に私が幼少の頃から、カメラを構えてないからね
今じゃ写真に関しては、ガチ勢だって言えるさ



「えぇと、皆にはちゃんと配ったけど、まだ余ってるな」
「バスコと翔瑠には渡したの?」
「あぁ、そうだった。翔瑠に渡しておこう」



丁度二枚あるし、両方とも渡しておけばいい



「お髭の人にもちゃんと渡すのよ」
「翔瑠が渡してくれるから大丈夫」
「ちゃんと自分で渡しなさい?」
「うぐっ…美怜ちゃんが怖い」



そんな事をわいわい話したのが、お昼休みの事

いつもの日常だった



「森永、購買に行こう?」
「う、うんっ」
「きゃっ。蛍介ったら優しい!」
「そんなことないよ。皆で食べるほうが美味しいと思ってさ」



蛍介は、森永だけでなく誰にでも優しいと思う
特に、一人でいる子には手を差し伸べている
敏斗もそうだったし、森永もそうだ



その森永は、今朝もまたカツアゲに遭っていた
一週間に一回はその場に出くわしている気がするのだが、果たして彼の運が悪いのか、私の運が悪いのか?



「森永って巻き込まれ体質なの?」
「えっ…」
「いや――カツアゲ、今朝もされてたからさ」

「あ、ありがとう。助けてくれて…よ、良かったら購買で何か奢るよ!」



いや、お礼をしてほしい訳じゃないんだけどな
それにお昼は『限定 幻パン』一択だから
人のお金で食べるよりも、自分で勝ち取った方が喜びは増す



「そう言えば――さっき、誕生日って…」
「ん? あぁ、私の誕生日に皆が来てくれたんだ」
「そうなんだ。皆って…?」

「蛍介でしょ、流星に、紅輝、道也、美怜ちゃんと瑞希ちゃん、それに明里ちゃん。晃司と翔瑠も来たよ」

「へ、へー! 」

「やっぱり持つべきものは友達なんだなぁ」



ニコニコ顔でそう言ったら、森永が急に落ち込んだ気がした
でも私は、誕生日の事を思い返しては嬉しそうに語り続ける
森永にも教えてあげたかったからと、完全に自分だけが楽しんでいた



「…でも、僕は誘われなかったんだよな」



彼の、そんな呟きすら聞こえないほどに――



「地味子、バスコが居たわよ」
「えっ」
「写真、渡すんでしょう?」
「…翔瑠! 写真あげる! 晃司に渡してあげてもいいんだよっ!」
「お、おいっ!?」



結局のところ、私と晃司の喧嘩は未だ、継続中だった




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