HERO GIRLA

□私達と飛ばし通帳とその後
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晃司があの場所に来たのは、森永の通帳の在処を自力で突き止めたからだった

私が其処に居るって知らなかったみたいだし、私の写真がメッセで送られていたのに気づいたのも、全てが終わった後だった



「大丈夫なのかよ、地味子!?」
「もう大丈夫だよ、翔瑠」



次の日には翔瑠の耳にも入っていたようで、学校で物凄く心配された



「でもよ、バスコがあんなにボコボコにされたんじゃ…」



そして、晃司の顔は次の日には酷くはれ上がっていた
勝利の証だとか言って、大事なモンコンを頭につけているし…ナンダアレ



「相手はとんでもなく怪力の大男だったのか?」
「いや、至って普通の人だったけど」
「あのバスコが…」
「マジかよ」
「どんな奴だ。畜生っ」
「皆、聞いてる?」



晃司を心配するバーンナックルの皆は、まだ見ぬ敵に対し、怒りと恐れを抱いているらしい



「違法な事をするから、罰が当たったんだよ。あいつらも」
「複数だったのか!?」
「えーと何だったかな…ホットドッグ? …よし。お昼のパン、それにしよう」
「は?」



何はともあれ、森永の通帳は返って来たしよしとする
すると、心配そうに大木さんが聞いて来た



「身体の方はもう大丈夫なんですか…?」
「ん? ちょっとまだお腹の辺りが痛いけど、別に何とも――」
「地味子さんを傷つけるなんて、許せません…!」
「私よりも晃司が酷いんだけどなぁ」



まぁ、傷は男の勲章とやらだし、大丈夫か
何か嬉しそうだし



「バスコ。ご機嫌だな?」
「地味子がちゃんと話してくれるようになった。俺は嬉しい」
「あぁ――仲直りしたのか?」
「あぁ!」
「あー、うん、そうみたい」
「…この温度差」



でも、と翔瑠は安心する
お互い話すようになったし、地味子ももう変な意地を張る事もないみたいだ



「はー。地味子さんとバスコが漸く元通りだ…」
「俺、感動して涙が出るぜ!」
「落ち込んだバスコなんか、見てられなかったからなぁ!」
「あぁっ。殆ど上の空だったしな!」
「…何かすみません?」



余程重傷だったのだろうか、晃司は
バーンナックルの皆にも余計な心労を掛けたみたいで、本当に申し訳なく思う




「地味子。そろそろチャイムが鳴るんじゃないか」
「あぁ、もうこんな時間。一限目から遅刻は大問題だ!」
「せめて、鞄を教室に置いてから俺らの所に来いよ」



翔瑠はそう言うが、自分の教室に行けば美怜ちゃんが昨日の事を蒸し返しそうな予感がしたんだ
それはもう、恐怖でしかないよ!



「もう行くねっ。ばいばい!」
「走って転ぶなよ。パンツ見えるぞ」
「本日は水玉です!」
「そんな情報要らねぇ! さっさと行け!」



あははと笑いながら、建築学科の教室を出る

賑やかな教室
いつもの日常

昨日の事が嘘のように穏やかだった

でも――と思う


…暫くは、ゴッドドッグが皆を狙っている事を、口にしないでおこうか







――地味子の居なくなった教室で、バスコが呟いた



「…翔瑠。ゴッドドッグの奴らに遭った。俺達を…中央エリアを喰おうとしているらしい」

「そうか…近い内、動き出すかもな」



…皆の表情から笑顔が消えた



「地味子は巻き込まれたのか?」
「あぁ」
「…ちっ。どうするかな」



今回、バスコをおびき出す為に地味子が使われた
本人に自覚がないにしろ、彼女はバスコにとって大切な奴だ
それは勿論俺もだし、此処に居るバーンナックル全員がそう思っている



「地味子さんに手を出す奴は許さん…っ」
「大木。俺もだよ」
「翔瑠!」
「暫くは皆、警戒をした方がいい。何か遭ったら連絡しろ」



一人の時を狙ってこないとも限らないからな
皆に呼びかけると、全員が力強く頷いた



「翔瑠。地味子さんに護衛をつけなくて大丈夫なのか?」
「あー…そうだな」
「必要ない」
「え?」
「地味子は俺が護る」
「バスコ…」



そう言ったバスコの言葉を、皆が真摯に受け止めていた




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