HERO GIRLA

□私とあいつと嵐のデート
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今日は朝から雨が降っていた
つい先日までは、茹だるような暑さだったのが、嘘みたいに涼しく感じる
それでもジメジメ感は否めないと、俺の不快度指数が上昇中だった



「道也。お前って名無しの何処が好きなんだよ?」



ふと一徹がそんな事を言い出したので、渦中の人物を眼で追う
彼女は今日も可愛らしかった



「優しくて強くて格好良くて、笑うと世界一可愛い。まるで天使な所」
「こいつ、重症だな」
「お前が聞いたんだべっ!?」


思わず殴りたくなる衝動をぐっと堪える
危ない、地味子ちゃんが居るのに、暴力的な俺なんて見せられないぜっ

それに、地味子ちゃんのいいところは他にもいっぱいある
今も明里と一緒に、教材を持って行こうとしてるし、何て優しいんだろう



「地味子、それは私が先生に頼まれた仕事なのだけど…」

「いいのいいの! 私がやりたいの!」
「だからと言って、一人で全部持つ必要はないと思うの」
「こんな量を明里ちゃんだけに持たせるなんて、先生も何考えてるんだろうね」

「…軽々と持って言うのね」
「?」



人の為に、しかも一生懸命なところがいいよなっ



「な、可愛いだろ?」
「…恋は盲目って言うけどな」
「おー。一徹が難しい言葉を!」
「俺の眼は、しっかり地味子ちゃんを映してるぜっ」

「「はいはい」」



喜介と一徹が、呆れた様な目で俺を見てくる
地味子ちゃんの良さを聞いたのは、お前らだろうが!



「そう言えば、前に二人でショッピングモールに行ったんだろ?」
「嘘だろ。デートか!?」
「あれはたまたま会ったんだよ。でも、二度も会うなんて…これって運命じゃね?」

「「はいはい」」



運命じゃなかったら、何だって言うんだよ?



「地味子ちゃんは優しいからな。そん時は俺の買い物に、付き合ってくれたんだぜっ」
「その優しさにつけこんだんじゃね」
「そうだぜ。お前に気がある訳ねぇ」
「あぁ? 俺だってワンチャンぐらいあるわ!」
「あるあ…ねーよ」



馬鹿にしたような顔でニヤつく二人を、本当に殴ってやりたいと思った
けど我慢だ、我慢…!



「地味子ちゃんの誕生日会には俺、家まで行ってお祝いしたしっ」
「それってお前だけじゃなくて、他の奴も来てたんだろ」
「確か、蛍介も行ったんだよな?」
「え? うん」




いつの間に話を聞いていたのか、蛍介が頷いた



「てめっ。盗み聞きしてんじゃねーよ」
「ご、ごめん…聞こえちゃって」
「道也の声がデカいからなー」



話している場所が教室と言うのも、考えものだった



「仮にデート出来たとしてだ。お前の事だから、家まで迎えに行くとか?」
「あー。それもいいけどよー」
「ん?」
「やっぱよー、デートするなら俺の事を待っててくれる方がいいよな」

「うわ、こいつ遅刻する気満々だぜ」
「最低だな」

「そんなんしねーし! 一時間前からビッと待ってるし!」

「(何処かで聞いたような…)」



ふと、蛍介が俺を見ていたから、ガンを飛ばしてやった
あいつは直ぐに視線を逸らした



「ぷっ、お前が名無しとデートとか、あり得ねーって」
「そんな奇跡が起きたら、千円やってもいいぜー」
「おう、俺もー」

「「ぷはははは!!」」

「てめぇら…!」


よし、決めた
もう殴ろう

幸い地味子ちゃんは、もう教室に居ねぇし!


そう思って拳を握り締めたら――



「あ、地味子ちゃん戻って来たよ」



…殴れなかったぜ、畜生!



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