HERO GIRLA

□私とお使いとお願い
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「おじいちゃん先生の呼び出しって何だろう?」



この学校の校長である彼を、『おじいちゃん先生』と呼ぶのは、私ぐらいしかいないだろう
校長室に向かう姿は、呼び出しを受けたにもかかわらず軽やかだ

校長室へは、勝手知ったる自分の家のようにくつろいでいるし
おじいちゃん先生がそれを咎めることはない、寧ろ歓迎してくれている

それを担任に教えてあげると、本当に驚かれてしまった
とてもフレンドリーに接しているものだから、時々彼が校長先生だと言う事を忘れてしまう




「おじいちゃん先生、来たよー!」



ノックもせず、がらりと開かれた扉の先には誰も居なかった
お客様が居なくてよかったと、無礼を働いた後でほっとする

おじいちゃん先生が見たら、まず咎められた事だろう



「居ない。また何処かに行っちゃったのかな」



多忙ゆえに校長室にいる姿は見かけないと、担任から聞いた事がある
実際、彼がここに居るのを見るのは、全校集会などや行事の際だろうか

それでも呼び出しがあったのは確かだからと、特に困った様子を見せずに中に入った



「まあ、待っていれば来るよね」



――今日は、テーブルの上にお菓子はなかった

以前はお饅頭を食べた所為で、ヒーローウーマンになってしまった(ちょっと御幣)
まんまと乗せられたのが悔しかったので、今回はそんな事の無いように注意を払おうと決めた

もっと学習しましょうねって言われたしね!



「とりあえず、怪しいお菓子には手を付けない!」



幸いと言うべきか、テーブルの上に怪しいお菓子はない
お菓子や怪しいものに手を付けなければ、おじいちゃん先生の策略(?)にハマる事はないのだ

ふふん、ちゃんと成長しているのだよ私は!



「ほっとしたら喉が渇いちゃった」



せっかくだし、おじいちゃん先生にお茶を淹れてあげよう
急須と茶葉を用意する姿は、勝手を知っていた
何処に何があるかなんて、手に取るように解ってしまうあたり、この場所は慣れ親しんでいると言ってもいい

だからこそ、ちょっとした変化にも気づく事が出来る――



「あれ。いつものと違う」



おもてなしの心を忘れないおじいちゃん先生は、茶葉一つにもこだわりを見せる
老舗名店の一杯云百円の茶葉がその主流なのだが、手に取った茶葉缶は、それとはまた別の高級さを感じさせる



「金色の缶なんて、中身が本当に茶葉かどうかも怪しいものだね!」



だがしかし、中身は歴とした茶葉である
鼻腔を擽る香りもまた格別に良かった




「また高そうな…変えたのかな」



おじいちゃん先生が選ぶのは、本当に趣味のいいものばかりだ
これもその内の一つなのだろうと、特に疑うこともなくお茶を淹れる準備をする




「ふんふん〜」
「おや。お待たせしましたか」
「大丈夫。さっき来たとこだから〜」



鼻歌まじりに急須にお湯を注いだ頃、おじいちゃん先生が戻ってきた
ナイスタイミングである

イソイソとお茶の準備をしていると、彼もまたそれに気づいたようだ



「お茶を淹れてくれているのですか?」
「うんっ」
「それは楽しみです」




おじいちゃん先生は、ニコニコ顔だった



「話ってなーに?」
「君にお願いがあります」



――うわ、来た!



「ほう?」




お願いと言う前置きに、しかし動じた様子を見せずに努める
どっしりと座った構えで彼を見据えた



「そう身構えないで下さい」



しかし、おじいちゃん先生はふふっと笑みを零す



「だって、この前の事があるし…」



お饅頭を勝手に食べた事が仇となり、私はヒーローウーマンの代役に立たされた
あれ以来、人の物を食べる時は裏に何かないかどうかを確認する癖がついた
美鈴ちゃん達には変な目で見られたけどね!



「ヒーローウーマンはお疲れ様でした。テレビでも人気だそうで」
「私じゃなくて、女優さんがねー」



ヒーローマンは、子供に爆発的人気がるようだ
言わずもがな私も大ファンである



「お願いとは、確かに頼み事ではあるのですが」
「空手の師範代ならやったじゃん」



ヒーローウーマンの後すぐに、小学生空手の師範代を任された事があった
一応有段者なので、師範代の役目もお手の物

見本として型を披露したら、何故か尊敬の眼差しで見られていた
ただの正拳突きなんだけどね?



「聞くだけでも聞いてみませんか?」
「ふぅん? …まあ、聞くだけなら」
「よかった。確かこのチラシに…そうそう、此処に書いたんでした」



そう言っておじいちゃん先生は。何かのメモを私に見せてくれた





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