HERO GIRLA

□私と眼鏡と復讐と
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「香川―」
「はぁい」
「北原―」
「へーい」
「長谷川―」
「はい」



朝のHR
担任が点呼を取り、出欠を執る
毎朝のおなじみの光景だ



「名無し―」
「地味子。出欠を執られてるわよ」
「…ふぁい?」
「まーた寝ぼけてんのか。起きろー」



眠たい目を擦りながら、へらへらと笑う
悪気なんて微塵も感じちゃいなかった

そして隣では明里ちゃんが、またかと言うように笑っている
もう日常茶飯事、当たり前の光景だった



「森永―…は、今日も休みだな」



そしてちらっと後ろを振り返れば――道也と目が合ったが、無視をした



「地味子ちゃんがっ! 今、俺を見た…!」
「加藤―」
「ぃよっしゃああああ!!!」
「うるせ。誰も叫べとは言ってないぞ?」



私が見つめるのは、その先にあるただ一つの空席

当たり前の光景がもう一つだけ、増えつつある
クラスメイトの一人が、学校に来なくなった

森永…


あの『飛ばし通帳』の件から、数日が経っていた



「森永の件。結局、あれからどうなったの?」



私は流星に尋ねてみる事にした
森永を心配して、率先して動いたのが流星
事の顛末をよく知っているからだ



「どうなったって――バスコとお前が乗り込んで一件落着、だろ?」



何処か不機嫌そうに言う流星に首を傾げた



「何だよ、自分で覚えてないのか?」
「いや、そう言う事じゃなくて…」
「その後、膝枕で仲直りしたんだろ、お前ら」
「あばばば…っ」




結果的にはそうなったけれど、別に喧嘩をしていたわけじゃ…
いや、傍から見ればあれは喧嘩なのだろう




「膝枕は置いといて! 何だっけ…ゴッドドッグ? 神野 仁だっけ」
「おう。一応、森永の通帳は無事に返ってきたけどよ」
「学校であれだけ大事になったら、来にくくなるのも解るけどねー」



そう言ったのは美鈴ちゃんだ



「誰か連絡とったりしてないの?」
「僕は何度かメッセを入れたりしてるんだけど、返ってこなくて…」
「ん? 蛍介、あいつのハイフォンXは詐欺られたって奴に渡したんだろ?」
「あっ、そうだった!」
「…あ、そっか」



なるほど、森永に通じる連絡は誰も出来てないらしい
かく言う私も、蛍介と同じような間違いを犯した一人である



「地味子も送ったの?」
「うん…返ってこないなぁとは、思ってたんだけどね」
「ふーん」
「そう言えば地味子ちゃん、今日は眼鏡ないの何で?」
「あぁ。今朝はバタバタしてて、家に置き忘れたみたいなんだ」



眼鏡がないと視力が弱いことを知ってか、蛍介はとても心配そうな顔をした



「大丈夫なの?」
「うん。眼鏡がなくても学校ぐらいなら気配で解る」
「え、気配?」
「そこまで来ると、もう達人の域ね。貴女」
「明里ちゃんに褒められた!」



別に褒めてねーよ、と流星が呟く

実際に、眼鏡なしの学校生活は、何処に誰がいるとを声で解るくらいに慣れてきた
階段を踏み外したりはもうしてないし、先生に呼び出しを食らっても、職員室へのルートはもうバッチリである



「眼鏡ない地味子ちゃんも好きだぜ、俺!」
「あ、はい。ありがとうございます」
「敬語!?」



道也のラブコールとやらを軽く受け流せば、皆が笑っていた





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