有名な住民との夢
□大島さん
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「良くここに来るけど、参考になる本、ある?」
受付の人がある日そう話しかけてきた。
「専門書がほとんどなのに、毎日通って何冊も借りて、すごいなって思っていたよ」
中庭で昼食を取りながら、受付をしている大島、という人はそう言った。
「いえ、そんなことないです。ただ偶然、私が知りたい事がたくさん書いてある本がここにあったってだけで・・・。」
自前のお弁当を食べながら、ショコラは小さく笑った。
大島とは以前から話してみたかったのだ。
知的な感じもあるが、なにより、美形。
「君の知りたい事って何?」
サンドイッチを食べながら、大島は興味深そうに言った。
「心理学・・・です」
と言ったが、実際は夢占いとかそんなのを調べているだけだ。
「心理学、フロイドが有名だね」
「あ、はい」
夢分析とかそんな本には大体フロイドとかフロイトと書いてある。
「僕は良く知らないけれど、彼はすごい人なんだろうね」
「あ、たくさん、本ありますし・・・核心ついてますし・・・納得できますしね」
夢分析が。
「あ・・・」
大島のランチパックからミートボールがこぼれた。
「あーぁ・・・さすがに食べられませんねぇ・・・」
「おかずが一つ減った」
「私のおかず、一ついりますか?」
そういって弁当をちょっと上げてみせる。
「いいよ。君の分をとってまで食欲を満たしたくない」
「私今日大目に作ってきたので大丈夫です」
「・・・じゃあ頂こうかな」
そういうと、大島は物色しだした。
「これは?」
「ロールキャベツです。大きいの作って小さく切ったんです」
「君が作ったの?」
「はい」
昨日。
「ロールキャベツか。何年も食べてない」
「じゃ、どーんともらってやってください」
「ありがとう。遠慮なくいただくよ」
そういうと、ロールキャベツ(の切ったの)を二切れ、自分のランチパックに移動させた。
「おいしくなかったら吐いてください。手遅れにならないうちに」
「大げさだね」
笑いながら、大島はフォークでロールキャベツを口に運んだ。