有名な住民との夢
□大島さん
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「・・・カフカ君・・・田村カフカ君」
大島さんが僕の名前を呼んだ。
「何?」
「・・・ショコラがいないから、いえるけれど・・・僕は彼女に恋をしてしまったみたいなんだ」
「恋・・・・?」
「そう。恋だ。」
大島さんに似つかわしくないような気がする。彼が恋をする姿なんて、想像がつかない。
「・・・どうして?」
「理由はいろいろある。保護欲・・・愛おしさ・・・」
「その事は、ショコラさんに言った?」
僕はそれが気になった。大島さんが、恥らって告白しないなんて全然想像できない。彼ならあっさりと思いを告げそうだ。
「いや、本当に好きになると言えないものだよ。好きなんだ・・・・」
大島さんの頬が赤く染まる。僕は素直に可愛らしいと思ってしまった。好きだけれど、伝えられない。いじらしい彼の姿は、また美しいと思う。僕は大島さんを応援したくなった。
「言えばいいんじゃないかな・・・。それか、遠まわしに伝えるとか。」
「怖いんだよ。カフカ君。怖いんだ。僕がどうあがこうと、彼女の想いは変わらない。真実をねじまげるなんて僕には出来ないんだよ。遠まわしに言おうと、直接言おうと、彼女の答えは一緒だ。それが怖い。知りたいけれど知りたくないんだ。」
大島さんがこんなに弱気な人だとは思わなかった。弱気でも、もっと普通に自分は怖い、と言いそうなのに、今の彼は支えがない赤ん坊のようだ。二本の足で立てるようになったのに、何か支えがないと倒れてしまう。
「じゃあ、僕が聞いてみようか。大島さんの事。」
「・・・いや・・・うん・・・・」
大島さんは本当に迷っていた。真剣に悩んでいる姿が、いつもの彼を幼くさせている。
「・・・じゃあ、お願いするよ、カフカ君」
まだ少し迷っている大島さんは、そう言って僕をみた。