小説

□大切なアナタに・・・
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銀杏の綺麗な黄色の葉がひらりと落ち始める、冷々とする冬。
茜色に染まる生徒会室の一角で僕は悩んでいた。
なぜならもうすぐ兄さんの誕生日だからだ。
僕は家族というものを知らなければ、友達もいなかった。
それに誕生日なんてみんな無かったから、気にもしなかったし考えたことがなか
った。
だから、どんな物をあげたら喜ぶとかわからない。
ロロは沈む夕日を見つめながらため息をつく。


「はぁ〜、どうしたらいいんだろ」


僕が外を見ながら悩んでいると後ろから誰かの声がした。


「なにがどうしたのかな?」


声の持ち主は、この学園の理事長の孫であり、
学園のあらとあらゆる行事を取り仕切る生徒会長のミレイ・アッシュフォードだった。


「生徒会長さん!いえ、ただの独り言です」


「そんな風には見えなかったけどなぁ〜
      なに、なにロロ好きな人とかできたわけ?」


ミレイはいつもと変わりない陽気で楽しそうな声でロロに聞いてくる。
ロロは困ったような表情で言う。


「好きな人なんていないですよ…」


好きな人…そんなの兄さんに決まってるよ。


「ふ〜ん。じゃあ、何をそんなに悩んでるの?」


なおもミレイは聞いてくる。


「それは……」


「わかった!もしかして、ロロ。ルルーシュの誕生日プレゼントで悩んでるんでしょ〜」


ロロの声と重なるようにミレイは身を乗り出して言う。

さすが、生徒会長さん。目敏い…


「シャーリーやルルーシュの隠れ親衛隊の女子たちも何をあげたらいいか悩んでたのよね〜」


「シャーリーさんも…」


確かに兄さんは女子からモテルのは知っているし、
いまさら仕方がないことだけれども・・・

負けられない。

ロロはシャーリーの名前を聞いた途端、自分が一番ルルーシュに喜んでもらえる
ような物をプレゼントしようと考えた。
だか、そんな直ぐに思い付くものでもない。
ましてや普通に考えても何をあげていいか分からないのだから無理に決まってい
る。
ロロが一人頭の中でグルグルしているとミレイが何か企んでるかのような声で話
しかけてくる。


「そうだ!
ミレイさんルルーシュが喜びそうなプレゼント思い付いたわよ!」


な、なんか嫌な予感がする。


「知りたい?」


「えっ、いえ、遠慮しておき…」


言葉を言い終わる前にミレイは、ロロの耳の近くでワクワクした声で話しかける。


「そ、そんなの無理ですよ!
兄さんが喜ぶはずありません」


「わからないわよ〜
でも、ルルーシュの事だから誰から貰うよりも一番嬉しいんじゃない」


確かにミレイの言い分にもわからないわけでもない。
ただ、それで本当に喜んでもらえるか不安なだけで。


「不安?」


ミレイはまるでロロの心を見透かしたように今まさ思っていたことを的中させる。
ロロは素直に答えた。


「…はい」


「別にね、プレゼントは何をあげてもいいのよ。
一番大事なのは気持ち。
ルルーシュの為に一生懸命になって、色々考えたってことだけで十分じゃないか
な」


僕は彼女の言葉を素直に聞き入れることができた。


気持ち…か。



「そう…ですね。
ありがとうございます」


「そのくらいいつだって相談に乗るわよ〜
だから、大好きな兄貴の為に頑張りなさい!」


そう言ってミレイはロロに笑顔で手を振るとそのまま教室を出ていった。
そのあと僕は色々考えた末に、生徒会長さんが言っていたのを含め、ようやくプレ
ゼントを思いついたのだ。
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