小説

□その愛で溶かして
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ことの始まりは、昨日の放課後。
僕はいつものように生徒会室へ向かう。
すると何やら騒がしい声がドアの外まで聞こえてきた。
僕はゆっくりとドアを開けると、生徒会メンバーの女子達が本を見ながら話していた。


『ねぇ、こっちなんかどうかな、会長!』


いつも以上の明るい声でシャーリーが生徒会長のミレイに訊ねる。


『う〜ん。ちょっとイメージと違うかなぁ〜〜
ルルーシュにあげるならこっちがいいんじゃないかしら?』


『そっかぁ。って別にルルにあげるなんて言ってないですよ、会長〜…』


シャーリーさん頬を染めながら、勢いよく立ち上がり、慌ててそれ否定する。
様子を窺っていた僕は、ドアから離れ二人に話しかけた。


『なんの話をしてるんですか』


『ロロ!』


二人の声が重なるように僕の名前を呼ぶ。


『もうすぐバレンタインじゃない。だから、その話をしてたのよ〜』


一番近くにいたミレイが説明する。


『へぇ〜…』


僕には関係なさそう話だ。
興味がなかった僕は、そのままその場を流そうとした。
でも、それを感じとったのか会長は、手を腰に宛てながら聞いてくる。


『あれ、ロロは興味ないの〜
好きな女の子から貰えるかもしれないのよ〜
そして、あわよくば付き合えちゃうかもしれないのよ〜
それだけでドキドキしない〜』


生徒会長の陽気な声がにいつもに増して輝きを放っている。
きっと生徒会長の事だから楽しんでいるに違いない。
そう肌で感じ、僕は少しハニカムように苦笑する。
好きな人にあげるチョコ……
別に興味が出たとかじゃなく、好きな人あげることに興味を持った。
兄さんの為にチョコ作ろうかな…
でも、変に思ったりしないかな。
同じ男に貰ったりして果たして、喜んだりするだろうか。
僕は頭の中で色々な考えがグルグルと巡る。
別に作るくらいなら大丈夫だよね。
そう僕は自分自身に言い聞かせる。
言い聞かせていないと、きっと何もしないまま後悔してしまう。
終わった後に後悔するくらいなら、あげてから後悔する方がずっとマシだ、と思ったからだ。
僕はシャーリーさんが見ている本に目を落とした。
見せてほしいなんて言えるわけもなく、少し遠目で見るだけ。


『あれ〜もしかして興味がでてきた?』


すかさず生徒会長は僕を覗き込むように背後から話しかける。


『…ぁっ、いえ…別に』


僕は少し慌てながら否定しようとした。


『その割にはシャーリーの読んでる本に興味あるように見えたんだけどな〜』


やはり生徒会長の目は鋭く、なんでもお見通しだった。
これ以上ここにいると、他の事まで執拗以上に聞いてきそうだと思った僕は、
用事があるフリをして出ていこうとする。


『あっ、僕、兄さん探しに行かなくっちゃ…』


僕の声と重なるように生徒会長が話し続けてくる。


『なに、なにやっぱり好きな人いるとか〜』


そして時すでに遅し、出ていくに出ていけない状態になってしまった。


『なんだ、ロロ。
お前好きなやつがいるのか…』


『に、兄さん!』


後ろのドアからルルーシュとスザク、そしてリヴァルが入ってきた。
なんと、タイミング悪くルルーシュ達が生徒会室にやって来てしまったのだ。
出ていくにチャンスを逃した上、兄さんに誤解されるようなことになった
僕は狼狽えてしまう。


『ぁっ…えぇ…と…』


ギアスを使って逃げ出したい。
でもきっと、今その場を切り抜けても後が怖いような気がした。


『お前もそんな年頃か…』


アハハハと茶化すように兄さんは口元を緩め笑う。


『兄さん!』


ロロは恥ずかしくて顔を真っ赤に染める。
僕はそのままいたたまれなくなり、その場から逃げるように
無理矢理理由を作り生徒会室を出て行った。
その後ろ姿を、兄さんのアメジストの瞳が切なく見つめているのも気づかずに。

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