小説

□その愛で溶かして
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僕がいろいろ気持がグルグルしている間に、とうとう当日になってしまった。
結局、僕は考えた末に作ることにした。
兄さんを思いながら試行錯誤をしながら・・・
そして、苦労しながらも甘さ控えめでザッハトルテを作った。
後は、これをいつ渡せばいいか、その機会を僕はうかがっていた。
午前中の授業が終わりランチタイムになり、僕は教室を出て
兄さん達がいるであろういつもの場所に向う。
その途中の廊下で音符が頭に飛び交っている会生徒長に会った。


『あら、ロロ〜』


『あっ、生徒会長・・・』


僕に気づいた生徒会長が上機嫌に話しかけてくる。


『あんたの兄さん、大人気ね。沢山女子たちが集まってたわよ〜』


『・・・そ、そうですか』


確かに、兄さんはカッコいいし、優しいから人気なのはわかていた。
わかっていたけれども、やっぱり嫌だな。
ロロは複雑な気持ちになる。


『妬けちゃう?』


『えっ?!』


生徒会長は僕の気持を察したのか静かな声で聞いてきた。
僕は思わず目を丸くする。



『そうよね。
あんた、ルルーシュのこと大好きだもんね。
モてる兄貴を持つと大変ね。』


元気出して!と言って生徒会長は僕の肩をポンっと叩くと
用事があるからと言って明るくその場を去ってく。
僕は何も言わずに後姿だけを見送った。


その後、兄さん達をお昼をとった。
こんなにも空は晴れ晴れしているのに僕の心はそれと
真逆に曇っていくばかり。
兄さんの前では明るく振舞っていたけど、チョコを貰ったのかとか
聞けずにそのままお昼が終わってしまった。
午後の授業もそればかり気になって、何も覚えられなかった。
どうしてこんなに気になって仕方ないのかな。
分かるのは、好きで好きでたまらないことだけで・・・

・・・好き過ぎて苦しい。そしてそれ以上に悲しかった。

今までだって好きで仕方なかったのにどうして今になって
こんな気持ちになるんだろう・・・
僕は痛む胸を押さえながら一人廊下を歩いていた。
ふと、オレンジ色に染まる外を見ると木の下で兄さんが目に入った。
僕は条件反射のように兄さんを呼ぼうとした。
けれども、呼べなかった。
いや、正確には呼べる状況じゃなかったからだ。
そこには、兄さんのほかにもう一人いた。
それは、生徒会メンバーのシャーリーさん。
上からだと声が聞こえはしなかったけど、
どうみてもいつもと様子がおかしいをシャーリーさん。
僕はしばらく上から様子をうかがっていた。


『私ね、ルルに言いたいことがあるんだけど・・・』


かすかに聞こえた言葉。
これはどう考えても告白にしか思えなかった。
確かに、シャーリーさんが兄さんを好きなことは知っていた。
家族になれるかもしれないという会長さんの前の言葉。
最初は家族というものに憧れていたけど、今は違う。
僕は兄さんさえいてくれればいい。
兄さんだけが僕の家族であってほしい。
だから、兄さんが僕以外の誰かを想うなんて嫌だ。
今すぐギアスを使って二人を遠ざけたかった。
でも、きっと兄さんにギアスを使ったことがバレてしまうし、
結果は変わらない気がした。
だから、僕はそれ以上その場で見ていることができなって、
重い足取りでクラブハウスへ戻った。


クラブハウスの自室に戻った僕は、後ろ手で閉めたドアにもたれかかるように
力無くその場に座り込んだ。
そして、足を抱えながらしばらく僕は考えていた。
今までのこと、これからのこと・・・
色々と・・・
考えているうちに空は段々と暗くなっていく。
それがまた余計に僕の心を暗い闇へと引きずり込んでいく気がした。


すると、そこに兄さんが帰ってきた足音がした。
そして、その足音が僕の部屋に近づいてくるのに気づき慌ててドアの前から移動した。
机の前まで移動してから、慌てていて明かりをつけるのを忘れていたことに気付く。
明かりをつけようとしたところにタイミングよく兄さんが入ってきた。


『ロロ・・・帰っているのか?』


『あっ、お、お帰り、兄さん・・・』


『どうした、明かりも付けないで・・・』


兄さんは心配した声で明かりをつける。
僕は兄さんにあれからどうなったのか聞きたかった。
でも、その反面聞きたくもなかった。
失ってしまうのではないかというのが現実を知りたくなくて。
真実を知ってしまうのがとにかく怖くて仕方なかった。
気づけば僕は体が震えていた。
寒いわけでもないのに、勝手に震える。
震えを抑えようとするけど、止まらない。


『どうした、ロロ・・・って、お前震えてるじゃないか』


兄さんは心配して僕に駆け寄ってきた。


『大丈夫だよ、兄さん。別に寒いわけじゃないんだ・・・』


僕は兄さんに心配をかけさせたくなくて、平気な顔をした。
とりあえず座ろう、と兄さんが言うからベッドの上に座っている兄さんの隣に距離を置いて座る。
座ったはいいけど、僕はそれ以上何も話すことができなくて、ただ部屋の床を見ていた。
気まずい空気の中最初に口を開いたのは兄さんの方だった。


『ロロ・・・お前に話したいことがあるんだが・・・』

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