小説

□その愛で溶かして
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さっきのことかもしれない。

そう、僕は瞬時に理解する。
きっと、付き合うことになった・・・と言うに違いない。
だって、兄さんは優しいから・・・
だから僕は・・・


『聞きたくない・・・』


勝手に口から出てしまった。
僕はこんなこと言いたかったわけじゃない。
でも・・・
誰にも渡さない。
兄さんが大好きなんだ。
僕は、どうすることもできなくて兄さんに抱きついた。
その勢いで兄さんはベッドの上に倒れ込んでしまう。
僕は無言でそのまま抱きついていた。


『ロロ・・・どうしたんだ・・・』


兄さんは僕に聞いてくるけど、何も言わず無視をした。
でも、そんな僕に対して兄さんは何度も名前を呼んだ。
そして、兄さんは強い口調で名前を呼ぶと、僕の体を引き?した。


『ロロ!!』


どうして、兄さんは平気でいられるの。
僕よりやっぱりシャーリーさんを選ぶの。
また僕の居場所がなくなってしまう。
そんな気がして、僕は一気に悲しみと悔しさに心が支配される。
兄さんを失うことが自分にとって、どれほど大きなこととは今まで考えもしなった。
だって、ずっと一緒にいてくれると思っていだから。
失うなんて思ってもいなかったから・・・
胸の焼け付くような痛み。ギアスを使った後よりもずっと痛い。


『・・・っ』


僕は、抑えられない感情に支配されるままに、
倒れ込んでいる兄さんの顔を無理矢理引き寄せた。
そして、冷たくなっている兄さんの唇に自らの唇を重ねた。
触れるだけのキス。
僕は震える声を振絞り告白をする。


『好き・・・』


言葉にしたとたん、今まで抑えていた想いが涙に変わって溢れ出した。


『ロ、ロ・・・お前・・・』


兄さんは、突然の事に驚いてアメジストの瞳を揺るがせていた。
その瞳を見て僕は我に帰った。
なにをやっているんだ、僕は・・・
傍にいたいから、ずっと兄さんと一緒にいるために僕はこの想いを
ずっと胸の中に秘めたままにしておこうとしたのに・・・
僕は焦りながらも今の事を否定しようと、忘れてもらおうと兄さんにお願いをした。


『ごめん、兄さん・・・今の忘れて・・・』


また、それはそれで悲しく感じた。
何もなかったことになる、なんて・・・
余計に切なさだけを心に降り積もらせる。


『忘れない・・・』


予想もしていなかったことに僕はビクッと体を震わせた。
どうして・・・
僕は戸惑うことしかできず、兄さんを見つめた。
すると、兄さんは僕を胸に引き寄せるギュウっと抱きしめた。
そして、甘い声で優しく耳元で囁いた。


『愛してる、ロロ』


僕はその言葉に驚き、同時に涙がまた溢れた。
何を言っているの、兄さん。
あんな事をしたのに、兄さんは僕を許してくれるの。


『に、い・・・さん』


『ごめんな、ロロ』


兄さんはさらに強く抱きしめ、僕に謝った。
でも、僕には兄さんが謝る理由が分からなかった。


『早くお前に言えれば、苦しまなくて済んだのにな』


『えっ・・・』


『俺も素直じゃないから言えなかったが、お前のことずっと好きだよ』


兄さんは僕の目もとに、そっと口づけながら囁いた。
兄さんが、僕を好き・・・
でも、じゃあ、僕に何を言おうとしてたの。
シャーリーさんとはどうなったの。
兄さんにたくさん聞きたいことがあった。
僕は気になって兄さんに恐る恐る聞いてみた。


『兄さん・・・』


『んっ?なんだい、ロロ』


『シャーリーさんとはどうなったの?』


『シャーリー?』


僕は正直に告白して、兄さんに謝罪をする。


『ごめんなさい、兄さん。僕、放課後の庭の木陰で兄さんとシャーリーさんが話してるところ見たんだ・・・』


ロロはバツが悪そうな顔で視線を落とす。


『あぁ、なんだ見ていたのか。ちゃんと断ったよ・・・別に好きな人がいるって・・・
だから、好きな人に悪いから受け取らなかった。』


『えっ・・・』


それって・・・もしかしても、僕のこと・・・でいいんだよね。


『結構、断るの大変だったんだぞ・・・』


そう、兄さんは少し照れながら小さなため息きをつき、
それ以上咎めることもせず、その代りに僕に甘い甘いキスをくれた。


『んっ・・・』


名残惜しそうに唇を離すと、ロロはちょっと待っててと言って部屋を出ていく。
僕は少し可愛くリボンで飾った箱を持ってきて、そのまま兄さんに渡した。


『はい。兄さん、僕からの・・・バ、バレンタインチョコ・・・』


いざ渡そうとすると恥ずかしくて僕は真っ赤になる。
頬を赤く染めるロロがまた可愛らしく見えたのか、
兄さんはクスッと顔を緩め笑いながら受け取ってくれた。


『ありがとう、ロロ』


僕は兄さんのその言葉に安心した。
兄さんに喜んでもらえてよかった。
暗かった心も兄さんの笑顔で一気に晴れていく。

兄さん、大好き。

また兄さんは僕を後ろから抱きしめてくれた。
笑い合い、見つめ合って自然と唇が重なる。


『好き!』


僕は兄さんに抱きつき心の真実をぶつける。


『あぁ、俺もだ。愛してる・・・ロロだけを・・・』


苦くて甘い僕たちの恋。
それは、まるでチョコレートと同じ。
体温でチョコレートは溶けてしまうけど、
体温よりも熱い兄さんの愛で僕の心は溶けてゆく・・・







FIN
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