短編

□憂鬱な日
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【憂鬱な日】




「どうして喧嘩をしたのか説明して」

先生は、うんざりしたような顔で、私と隣にいる田中を見る。

「めんどくせぇな。別に喧嘩してない。俺帰っていいか?」

てめぇが原因だろ。と思ったけど黙っておく。今、この状態で帰らせてくれ、と言っても帰らせてはくれないだろう。それと、教師が生徒の問題に関わるのはどうかと思う。


たまにいるんだよね。イジメの問題は無視をして、どうでも良い争い事には首を突っ込みたがる教師。そのくせ、うざったそうな顔をしている。


「私が説明をします。田中君が、早瀬君の持っていた漫画・CDを家に遊びに行った時に盗んだのが原因です。早瀬君が返してもらおうと話かけたら、田中君が殴ったので私が止めに入りました」


「そうなの?私が見た時には田中君とあなたが、殴り合いをしていたような気がするんだけど?」

「止めに入った私を、田中君が殴ろうとしてきたので、投げただけです。ただの自己防衛です」

「だからと言って投げたら逆効果でしょ?」


あぁ面倒くせぇな。大人のくせに。よっぽど暇人なんだな。田中は黙ってるし、そわそわ時計を見てるし。

「私ではなく田中君を責めるべきでは?」

「私の質問に答えなさい」

「はい。女の子は男の子に勝てませんし、抵抗していなかったら顔に傷がついてました。彼は、殴りかかってきたわけですから。もし、そういう目に合ってたら私の親が黙っていません。それに田中君がしたことは窃盗です。きちんと指導をしなければ段々エスカレートし、この先も窃盗する可能性は十分あります」


私の親が黙っていないというセリフで先生は顔を引き締めた。大人は大人の権力に弱い。滑稽だ。私もいずれ大人になる。その時は権力に怯えずに生活したいけれど、それは無理な話だろう。


「では、もう話すことは無いので失礼します」


田中が舌打ちをしながら私を睨んだけど気にしない。先生から注意されるはずだ。危害を加える様なことはするな、自分の親に迷惑がかかる、と。それだけ私の親はお金持ちで権力がある。



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