「…ッはぁ」
激しい目眩。隣の女の顔が歪んだ。
「そ の、クスリ…」
「ああ、今朝廃人から絞っ………」
ヤバい。バレたか?
が、然程気にする様子もなく、女は落ち込んでいた。
「其、私の父がばら蒔いたモノ…アル」
言ってしまって頬を赤らめる女。先程とは違い、子供っぽい口調で話す所を見ると、さしずめ少女の様だった。
「お前の父親が…?」
(一体どんな家庭環境してやがるんでィ)
「でも今は居ない…旅に出ちゃったから。…もう敵としか…」
俯く女。目を大きく見開いて、涙を堪える姿は普通の少女の様だ。…此処が歌舞伎町じゃなかったら。
「もう私、抗争なんて嫌ネ。…こんな理不尽な戦い、望んで無いのに…」
知らない内に手が動いていた。わしゃわしゃと頭を撫でまわす。ぽかんと呆れ顔で見つめる少女。
「仕方無ェ。…ついて行ってやるよ」
暇だしな、と付け加える。少女は笑顔をこぼした。手をとって立ち上がる。自分がこんな事を口走るのはヤクのせいだと考える事にした。
「ところで、…何て言うんでィ。その薬」
「え…と。…たしか」
「『ギブス』」
明日はどうなるか分からないけど、今日は。