遊戯王

□33pの高み
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 放課後、今日僕は補修で、珍しく城之内君も本田君も一緒じゃなくて(もしかしなくてもマズイよね僕)、数学教室に1時間以上閉じ込められてた僕は、疲労困憊だったから放っておこうかとも思ったけれど、辞書を忘れているのに気付いて教室へ踵を返した。あれがないと今日の課題が出来ない。最もあったところで、出来るのか、そもそもやるのかどうかは我ながら怪しいが。
 からり、と軽い音を立てながら扉が滑って、かぁ、と教室全部に夕日が射して、僕は目を細めて教室へ入ってからその影に気が付いた。

「かいば、くん」
 そう言えば来てたね今日。何でまだ帰ってないの、君。
 教団の前に立つ海馬君はどこか遠くを見るような目をしていて、そのままの視線を僕に向けた。

「ゆ、」
「海馬君は、もう一人の僕が好きなの?」

 ・・・何言ってるんだろ、僕。
 何か言いかけた海馬君は、そのまま眉間に皺を寄せて睨むみたいに僕を見詰めた。
 唇が薄く開いている。肌も瞳も髪もそうだけれど色素が薄い。

 こつ、ゆったりした歩みで教壇に登って、海馬君に歩み寄る。
 知ってるよ。今日君が来た理由。そりゃ、最低限の出席は君だって必要だろうけどそうじゃなくて、
「じゃあな海馬、たまには学校来いよな」
 この間別れ際、何の意図もなく(そう僕には分かる。本当に何たる意図もなく)君に告げたあの言葉なんでしょう。
 それは僕の口が発した僕の声だけれど僕の言葉じゃない。

「ねぇ、何で帰らなかったの?」
 待ってたの? 僕を? 鞄持って行って、普通に考えたらもう帰っちゃってる僕を?
 それとも辞書を忘れてることに気付いてたのかな。君は偶に驚くほど僕のことを見ている。
 やっぱり辞書なんて置いて帰れば良かったね。

 こつ、

「誰を、待ってたの?」
 ねぇ、誰を。何を。
 海馬君の顔はもう目の前。20cm程の高さの教団の上に立つ僕と海馬君の間には、それでも10cm程の開き。

 ぐっと学ランの襟を掴んで引き寄せる。簡単に振り払えるだろうに海馬君は大人しくされるがままになっていた。でも目は閉じてくれなくて、それは僕もだったから君の青い瞳が凄く近い。
 少しして手と口を離すと、海馬君は黙ったまま身体を離して、足元にあった鞄を拾い上げると足早に教室を後にした。僕は3回君の名前を呼んだけれど何の反応もなかった。

「か・・・」

 ぱたん、

 四度目の名前を呟こうとして、閉ざされた扉にさえぎられるように声が途切れた。
 結局何の答えも貰えなかった。

「・・・ま、いいや」

 別に僕は誰が誰を好きでも構わないし。
 たとえば海馬君がもう一人の僕を好きでも。
 たとえ、もう一人の僕が僕以外を好きでも。

「どうせ、全部僕のものだし」

 聞こえてるかな、ねぇ、僕の大好きな二人とも?
 もう一人の僕の心と身体(は最初からなかったっけね)は勿論、もう一人の僕を好きになった海馬君も含めて、ぜんぶ。


 ていうかDM当時の遊戯王界は丸ごと全部。
 主人公攻め同盟加盟にあたり、私の主人公観纏めようと思ったら何故か電波表様になった(様?)。
 別に兄貴でも良かったですが、兄貴は人に好かれたい願望も人を手に入れたい願望もないので。
 表ちゃんは最後は笑ってますが後は終始超無表情(怖い)。

放課後サンセット

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