遊戯王

□ももえと亮と明日香
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「どこへ、行ってしまわれたのかしら」

 アカデミアの中は大体探して、寮にも一度訪ねてみたけれど、目的の人は見当たらなくて。

( もう諦めろということでしょうか )

 ももえは、両手で大切に持ったチョコレートへ視線を落とす。
 あの方は今日私が見ていただけでも両手に余るほどのチョコレートを受け取っていて、何となくそれらと一緒にはしたくなくて、
 そう思いながらずるずる授業を受けていたら、放課後にはその人は姿をくらませていた、という訳だ。
 多分、私みたいな人から逃げて。

( でも、)

 渡すだけ。そう渡すだけだ。
 気持ちを伝えようなんて思ってはいない。
 だって私はこんなに臆病だ。
 伝わればいいと、漠然と願うだけ。

 そんなことをしている間に、1年生は終わろうとしている。

 少しだけ泣きたくなって、海の方へ視線を向けた。
 すると、その視界の下の方、真っ白な灯台のその下に、
 あの方の姿、それに、もう一人。

 隠れるつもりではなかったが、つい身を隠しながらそちらへ近付いて、辛うじて会話が聞き取れる位置で立ち止まる。

「・・・もういいんじゃないか?」
「まだ無理よ。寮の前で張ってるだろうし」
「門限ギリギリまで、となるとかなり気温が下がるな」
「そうねぇ・・・」

 予想通り逃げてきたらしい明日香様と亮様の鞄の中には、それでもそれぞれチョコレート、ばかりではないだろうが受け取ったのであろうカラフルな箱や袋が沢山あって、
 明日香様はそれらを落とさないように、その下から、水色、の、

「あげるわ」
「すまん・・・」

 明日香様は渡した、亮様は受け取ったそのマフラーを暫く見詰めたまま、

「・・・いや、ありがとう」

 言って、きっと手編みのそれを、酷く綺麗な仕草で首に。
 あぁこの所為だったのだ最近明日香様がやけに夕食が遅かったり朝遅刻ギリギリだったりしたのは。
 何て馬鹿なの。私、気付きもしないで、
 それ以上に、

( ・・・知りませんでしたわ )

 知らなかった。
 あの方があんな風に笑うなんて。
 チョコレート渡されて、ちょっと困った顔して、それでもありがとうって受け取って、
 それもとても素敵なのだけど。

 でも、違う。
 あれは、違う。

( 敵いません、わ )

 敵わないことも、叶わないことも、私は知っていたけれど。

( どうしましょう。これ )

 分かってたけど迷惑なだけなら渡さない方がいいだろうし。
 かといって持って帰るのは虚しいし、捨ててしまおうか。
 引き摺りそうに重い足取りで屋外に設置されたゴミ箱へ向かう途中に、ふと人だかりが見えて。

( そうね )

 そうしよう。
 だって彼は、あの方の、

「吹雪様! 私のチョコレートも受け取ってくださいましー!!」

 お兄様なのですから。


 亮←ももえと見せかけて明日香←ももえっていう・・・ね。
 ごめんなさい石投げないで!
 密かに推奨してるのです・・・。駄目ですか。
 ももえがカイザーのこと何て呼ぶのか思い出せなくて調べてたらえらい時間喰った。
 一応言うとうちの亮明日は恋人未満です。どう見ても恋人な友達(以上)。

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