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□細腕
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「なでしこって、唯世君とよく噂あるよね。あ、ややと空海もあるし、逆もなくはないけど」
 ロイヤルガーデンに向かう途中、誰に何を聞いたのかあむちゃんがそんなことを言った。
「そんなこと言ったら、あむちゃんと辺里君や相馬君の話もよく聞くわよ?」
 嘘ではなかった。あむちゃんはしょっちゅう相馬君と連れ立って×たま狩りをしているし、辺里君に告白した場面は皆が見ていたし。
「じゃなくて、なでしこさ、本当に唯世君のこと何とも思ってないの?」
 どうやらそれが訊きたかったらしい。うーんそれ以前の問題が多々あるのだけど、言う訳にはいかないしな。
 相馬君ならまだしも、辺里君は僕の性別を知っているから、お互い意識しようもないのに。
 まぁ、だからこそ親密に見えてしまっているのかも知れないが。

「何ともっていうか・・・友達とは思ってるけど」
「格好良いとか、可愛いとか、思わないの?」
「そうねぇ・・・。彼はあまりタイプじゃないから」
 おいおい可愛いって。女の子に言われてるよ。良いの辺里君?
「何で? なでしこ、自分より背高くないと嫌とか? でもなでしこが背高いからそれだとあんまり居ないよね。あ、空海とか」
 ちょっと勝手に話進めないでよ。本当女の子はこういう話好きなんだから。
「けどさ、なでしこ、女の子だから、すぐ皆の方が高くなっちゃうんだろうね」
「・・・そうかしらね」
 あまり深く考えないように、曖昧な返事をした。

「辺里君も、きっとすぐにあむちゃんよりも高くなるでしょうね」
 彼は少し発育が遅い方だけれど、成長期はこれからで、ぼんやりしていたらあっという間に見違えるのだろう。
 それは、困ったことに僕にも言えることだけれど。
 そうかな、と言って少し未来の彼を夢想したらしいあむちゃんが頬を染めて目を伏せた。
「でも私は、私よりは小さい子がいいわ」
 隣を歩くあむちゃんを心持ち見下ろす。
 彼女もどちらかといえば長身な方で、今は僕とあまり変わらないけど、きっと直ぐに差が開く時が来るのだろう。

「え、なでしこ、やっぱり唯世君のこと・・・っ」
「もう、違うわよ。大丈夫」
 うろたえるあむちゃんに笑いかけて、ほんとに?と呟く彼女に本当よと誓う。
「私は、いつだってあむちゃんの味方よ?」
 だから、彼にも、君にも、何もしないし出来ないけど。
「さ、行きましょあむちゃん」
 女の子らしく、と胸中で呟いて緩く引っ張った手は、僕のそれより一回り小さくて、細くて、繊細で。
 いつまでも、女の子では居られないのだと痛感する。だって、こんなに君の腕が綺麗だから、

 君に『僕』を名乗ってみたい私が居る。


 なぎあむっていうかなであむっていうか。最初は唯なでで落ちると思ってたんだ私。
 なぎーは別にあむちゃんを奪ってやろうとは思ってないけどあむちゃんのこと好きだと思う。

133 妖艶な細い腕を僕のものに

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